太極拳の遣い手が格闘技の経験者に秒殺されるといったケースがあり、ネット上では常に「伝統武術は役立たず」と疑問視されている。ニューヨーク・フラッシングで道場を開く王偉年氏は、中国新聞社のオンラインインタビューに応じた際に「これほど大きな物議を醸しているのは、今回の決闘だけが原因ではない。人々が武術を理性的にとらえていないことが、根本的な原因だ」と指摘した。
王氏は「中国武術は奥深く、さまざまな流派があり、特長もそれぞれ異なっている。系統的に理解している人は少なく、一つの動画だけで勝手に決めつけるのでは不公平だ」と一蹴する。
王氏は「時代の流れと社会の進歩に伴い、護身術として武術を習う需要が減少し、健康促進の需要が拡大している。これは武術は見栄えだけという誤解を与えている」と話した。
王氏の道場には約100人の練習生がいる。多くが中国系だが、3分の1弱が白人などだ。「武術が見栄えだけならば、月謝を納めてまで学ぼうとするだろうか」
記者は今年の春節(旧正月)連休中、「文化中国・四海同春」芸術団に随行し、スペインを訪問した。現地ではホセさんという名の中国武術マニアと知り合った。自費で河南省の少林寺で数カ月学び、帰国後も団地内で螳螂拳を教えているスペイン人も、華人の練習生から中国伝統武術を疑問視する声を聞いた。
ホセさんは「格闘技にはそれぞれ特長がある。柔道とボクシングを比較できず、レスリングとテコンドーの強弱を判断できないのと同様、どの競技が最強かという問題はそもそも存在しない。一対一の勝負で、ある武術の強弱を決めようとする発想は間違っている」と分析した。
中国武術の価値を貶め否定するのと同様、武術を盲目的に崇拝する考えも、この物議を醸す一因となっている。
映像・文学作品の表現により、中国武術のロマンあふれる想像が広がっている。特にある技を過度に誇張することにより、誤解が深まっている。
王氏は「武術界の自浄が必要だが、人々も中国伝統武術への見方を変えるべきだ。実戦に過度に期待するよりも、武術の中身に注目して欲しい」と指摘した。
武術は中華文化を代表する名刺で、それが伝えるのは軽やかな動作などではなく、武徳に含まれる中華文化と伝統的な美徳だ。王氏は「私が練習生に教えているのは技だけではなく、中華文化の克己復礼、百折不屈の精神でもある」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年5月7日