今年6月1日をもって、「レジ袋制限令」が中国で10周年を迎えた。国家発展改革委員会の統計データによると、この10年間でスーパーや商店でのビニール袋使用量が3分の2以上減少し、合計で約140万トン減少した。これは石油消費量を約840万トン削減したことに相当する。ところが中国のプラスチック消費量は毎年増えている。各大手メディアは近年、レジ袋制限令の効果を疑う声をあげ続けている。中国網(記者:馬超、彭子倩)が伝えた。
複数の専門家は中国網のインタビューに応じた際に、レジ袋制限令の効果を理性的にとらえるべきであり、レジ袋制限令のアップグレードには社会全体の共同参画が必要だと指摘した。
制限令は効果あり
清華大学環境学院教授の劉建国氏はインタビューで、次のように話した。
レジ袋制限令を施行したのは、まず超薄型ビニール袋の生産・販売・使用を全面的に禁止するためだ。次にビニール袋を有料化し、それから回収利用を促進するためだ。現状を見ると、1つ目の目標はほぼ達成されている。有料化も一定の効果を発揮しているが、これによってビニール袋の需要を減らすことはできていない。3つ目の目標は達成されていない。しかし有料化により、資源を無料で使用できないことを人々が意識したことに注意すべきだ。
ゴミはそもそも消費の産物だ。どのような国であっても、経済が高度成長する段階にゴミの量が減ることはない。これは社会の発展の客観的な法則だ。過去10年間は中国経済が高度成長し、人々の消費が急増した10年だった。プラスチックごみが増えるのも理解できる。
客観的に見ると、レジ袋制限令は一定の効果を発揮した。政策そのものに過度に期待し、プラスチックごみという大きな難題を一つの措置で徹底的に解消することに期待すべきではない。
中央団校、中国青年政治学院副研究員の程立耕氏は、次のように判断した。
レジ袋制限令は一定の効果を発揮した。10年前と比べ、分解されないビニール袋の使用量が大幅に減少し、人々の環境保護意識も高まった。大型スーパーを除く、農産物市場や個人事業主などが有料化を徹底していないが、当然ながらこれらの問題も無視できない。
現在のプラスチックごみ処理が直面している新たな問題は、激増するフードデリバリーと宅配便だ。宅配業だけでも、2016年にはビニール袋の使用量が147億枚に達した。
社会の進歩、経済発展、産業構造の調整に伴い新たな問題が生まれる。それに応じて政策も調整する必要がある。
汚染防止は法整備から
劉氏はさらに、次のように指摘した。
プラスチックを不当に貶め、プラスチックすなわち環境破壊とする人もいる。実際にはどのような材料であっても、生産と使用によって環境に影響を及ぼす。材料が環境に優しいかどうかについては、その一部だけを見て一方的に判断してはならない。
問題解決で重要になるのは、源から量を減らし、管理を強化し、規範的に処理し、合理的に使用することだ。まず企業と個人が環境の責任を担い、生産・流通・消費方法を変えることで、源からプラスチックごみの発生を減らす。ゴミ発生後は、分類・収集・処理・利用などの各部分で規範的な処理を行い、質の高いプラスチックごみのリサイクルを実現する。全社会が行動するためには、厳しい法制度による支援が必要だ。また立法、法執行、法律知識普及、法律遵守のすべてを法治が貫かなければならない。
著名時事コメンテーターの呉学蘭氏は「一部の地方は数年前に、白色汚染の改善にはまず、立法面から取り組む必要があることを意識していた」と述べ、次のように話した。
甘粛省が2014年1月に施行した「甘粛省の廃棄農業用フィルムのリサイクル条例」は、中国初の廃棄農業用フィルムのリサイクルに関する地方条例で、高い模範効果を発揮した。甘粛省に続き、各地が廃棄農業用フィルムのリサイクルを法制度化した。
レジ袋制限令の方向は正しいが、いかに制限するか、制限方法が正しいか、制限の程度が十分かについては検討が必要だ。この10年間に渡り、関連部門が不合格ビニール袋の使用に科した罰金は微々たるものだ。甘く的が絞れておらず長期的な効果を持たない監督管理に問題がある。良くやっても奨励がなく、悪くやっても懲罰がない。これでは厳しく遵守する動機がない。
未来のプラスチックごみ処理に向け、より厳しい懲罰制度を打ち立て、レジ袋制限令を見せかけだけではなく実質を持つ法令にするべきだ。今後は国レベルで法整備し、国の関連部門が専門家を集め「白色汚染」の分類を行い、生産及び使用の禁止・制限範囲を明らかにするべきだ。違法行為を公開し、法律を着実に執行できるようにするべきだ。
意識と行動が重要
一般人の生態意識の高まり
中国生態環境部は年初、今年の中国環境日のテーマ「美しい中国、私が行動者」を発表した。生態環境部の関係者によると、このテーマは社会各界と市民が生態文明建設に積極的に参与し、青い空と緑の大地と清らかな水による美しい中国を建設するため、共に行動するよう促すことが狙いだ。
劉氏は「このテーマはプラスチック汚染防止の、知るは易いが行うは難しという弱い部分を突いている。考えるばかりで行動をためらうのではなく、傍観者の心理を捨て自分からやり、環境保護活動に積極的に参与することで、社会全体に影響を及ぼすよう促している」と指摘した。
中国網は微信公式アカウントを使いアンケート調査を行った。有効回答数は200人余り。「ゴミ分別に一定の理解を持つ」は82%、「より複雑なゴミ分別基準を支持し遵守する」は89%だった。買い物でマイバッグを「いつも持っていく」「時々持っていく」は65%。
程氏は「社会全体の環境保護意識は現在、向上を続けている。人々の環境保護制度への支持と実行の程度も大幅に高まっている」と述べた。
企業がグリーン発展に注目
グリーン発展を自覚的に長期発展計画に盛り込む企業も増えている。
ネット通販大手・京東商城の物流部門は今年5月に「清流万向計画」を発表し、2030年までにCO2排出量を10億トン削減すると予想した。同社は今後、新エネ車による物流グリーンルートや、エネルギー消費量と汚染の少ない企業の商品を優先的に調達する制度を構築する。同じく今年5月、アリババ・グループは「グリーン物流2020計画」を発表した。天猫(Tmall)はすべての宅配袋をエコ袋にアップグレードする。淘宝(タオバオ)とフリマアプリ「閑魚」は、全国200都市でエコ袋を使い商品を回収する。小売プラットフォーム「零售通」は小型100万店舗の使用するダンボールのゼロ成長を実現し、100都市で新エネ配送車を使用する。無人スーパー「盒馬鮮生」は物流全過程の資材消費ゼロを実現し、出前アプリ「餓了麼」はグリーン・エコデリバリー連盟を発足する。
程氏は中国企業の環境保護の取り組みを評価し、「環境保護技術に開発費を投じる企業については、諸手を挙げて歓迎する。我々は政府に対して、免税や投資などの政策面の支援を提案する。こうすれば環境保護製品の開発と生産に加わる企業が増えるだろう」と話した。
国によるプラスチックごみ対策
国家郵政局などの10部門は昨年11月に「宅配グリーン包装活動の共同推進に関する指導意見」を発表し、2020年までに生分解性を持つグリーン包装材料の使用率を50%まで引き上げ、専門的な宅配包装材料回収システムを構築すると明確にした。
国家発展改革委員会は今年1月上旬、公式サイトで「プラスチックごみ汚染防止への私の提案」と題した情報を発表した。各分野のプラスチック製品の管理要求をめぐり、全社会から意見と提案を求めた。
国務院は今年2月「宅配暫定条例」を発表した。条例第9条によると、国は宅配業を経営する企業と差出人に対して、生分解性を持つ再利用可能な環境保護包装材料を奨励する。また宅配業を経営する企業が宅配包装材料を回収する措置を講じ、包装材料の減量化利用と再利用を実現することを奨励する。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年6月11日