中国第35回南極科学調査任務を遂行中の「雪龍」号が中国時間1月19日午前10時47分、アムンゼン海の氷密集エリアを航行中に濃霧の影響で氷山に衝突した。負傷者はおらず、船舶の動力システム、通信ナビゲーションシステムも正常に作動している。
船は障害物を認識するレーダーを搭載しているが、どうして氷山に衝突したのか。南極エリアで航海の経験がある船長は『科技日報』に対して次のように述べた。極地での航行において、レーダーは障害物を察知する有効的な手段だが、弊害もある。例えば、反射された信号電波にもとづき、浮氷塊か氷山かを区別することは困難である。自然資源部の状況報告も、「雪龍」号はアムンゼン海の氷密集エリアを航行中だとしている。
北京師範大学グローバル変化・地球系統科学研究院院長の程暁教授によると、アムンゼン海は南極の棚氷崩壊底部の融解が最も激しく、前部の崩壊が最も活発なエリアである。1月13日から20日までの8日間の衛星映像を見ると、同海域に大量の浮氷が存在し、その間に小規模の氷山がある。沿岸のカタバティック風の影響で浮氷が全体的に北に移動し、「雪龍」号の航行に影響を及ぼしたとみられる。
程暁氏は同海域の2018年同期の衛星映像と比較し、「2018年は浮氷が比較的安定し、面積の広い浮氷が多かったが、2019年は砕けたものが多い」と分析。気象条件については、2018年と19年で雲の量が大きく変化し、2018年はサイクロンの条件が安定し、海氷も安定し、海氷の境界がはっきりしていたが、19年はサイクロン活動が激しく、海氷の粉砕につながったという。
また報道は、氷山に衝突したのは濃霧の影響だとしている。
同船長は、南緯55°~65°の間は西風帯サイクロンとポラーサイクロンが発生するエリアで、風が強く波が高く、岸の近くに浮氷と氷山が多く、航行条件は複雑だと分析。「氷山、浮氷、濃霧の3つが重なり、さらに濃霧の氷密集エリア航行というリスクが加わった」と話す。
氷山衝突時の「雪龍」号の速度は3ノット(時速約5.56キロ)だった。このような速度でどれほどの衝撃力が発生するかに関心が集まる。
同船長によると、船舶により航行速度は異なり、一般的な速度は10~15ノットで、3ノットは人が歩くより遅く、氷を砕く程度の速度で、業界内では安全な速度と見られている。しかし同時に、速度は遅いが、2万トンの砕氷船である「雪龍」号は普段から強い衝撃を受けており、衝突は船体の損傷につながると指摘した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年1月23日
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