中国の新型コロナウイルス感染症対策が常態化してすでに1年以上になっている。では、今後も引き続き、対策を常態化すべきなのだろうか?「ゼロコロナ」対策を今後も講じ続けていくべきなのだろうか?常態化する対策をどのように一歩踏み込んで整備することができるだろうか?中国国家衛生健康委員会の新型コロナウイルス感染症対策業務指導グループ・専門家グループのグループ長を務める清華大学の梁万年教授にこうした問題について取材した。
中国の理念は「人民至上、生命至上」
梁教授は、「新型コロナウイルスは非常に厄介なウイルスで、世界は依然としてパンデミックの段階にある。また、感染拡大が依然として深刻で、ウイルスの変異が加速しており、封じ込めも難しくなっている。新型コロナウイルス感染者が発病するまでには潜伏期間があり、無症状の感染者もいて、感染力もさらに高まっている。現在、中国の新型コロナウイルスワクチンの接種率は、しっかりした集団免疫を獲得する程度にまでは至っていない。そのため、慌てて対策を緩和してしまうと、せっかく得ていた対策の成果が台無しになってしまう可能性がある。多くの国の対策の実践は、対策緩和の時期が早すぎると、リバウンドや重症者・死者の増加をもたらすことを示している」との見方を示す。
そして、「新型コロナウイルス対策は、対策の理念と目標に沿っている。重大な感染症拡大をめぐっては、国や地域によって対策の理念と目標が異なる。対策の目標は、国民の健康を中心にして定めるのか、政治的必要に応じて定めるのか、または他の必要に応じて定めるのか、それぞれ異なる。中国の対策の理念は、『人民至上、生命至上』。目標は可能な限り人民の生命を守り、発病と重症者、死者を減らし、社会的秩序と経済発展を維持することだ。特に、人民の生命を守ることを第一としている」と説明する。
「ゼロコロナ」対策は「感染者ゼロ」ではない
梁教授は、「中国は依然として、新型コロナウイルス感染症対策を常態化させている段階にあり、海外からの流入や国内でのリバウンドを阻止する対策を維持している。中国が維持する『ゼロコロナ』対策は、『感染者ゼロ』を目指しているわけではなく、感染者の発見、診断、隔離、治療を最大限早期の段階で行うことで、継続的な市中感染を断固として阻止することを目指している。そのため、中国の『ゼロコロナ』対策は、国内症例が発見された時に講じる対策となる。常態化された新型コロナウイルス感染症対策は、▽輸入症例と関連のない国内症例を防ぐ▽国内症例の散発を防ぐ▽局地的な集団感染の発生を防ぐ▽多くの地域での散発、集団感染を防ぐ―――の4つに分けることができる。国内症例が発生していない場合も、警戒度を高めた指揮系統を維持する。また、国内症例が発生した場合は、『ゼロコロナ』対策を通じて、早期発見、早期処置、ピンポイントの管理・制御、効果的な治療を行う」と説明する。
そして、「1年以上の経験は、中国の常態化した新型コロナウイルス感染症対策は効果的に感染発生や拡大を防ぎ、新型コロナウイルス感染症対策と経済・社会の発展のバランスを取れることを証明している。『ゼロコロナ』対策を維持することで、短期的には、感染者や濃厚接触者の日常生活が一定の影響を受けるかもしれないが、長い目で見れば、感染や発病、死者を最小限に抑えることができ、人民の生命と安全を守ることができる。また、医療崩壊を防ぎ、人々が影響をうけることなく通常通り病院で治療を受けることができている。感染拡大の範囲をできる限り小さくすることで、経済・社会への影響も減らすことができる」との見方を示す。
現段階では「海外からの流入・国内でのリバウンド阻止」を維持
新型コロナウイルス感染症対策にとって重要なことは「迅速」という言葉に集約できる。梁教授は、「感染力が強い変異株に対応するために、迅速に対応メカニズムを立ち上げ、ピンポイントで厳格な対策を講じなければならない。PCR検査や疫学調査、感染者の報告も迅速に行わなければならない。各種対策は、拡散しようとするウイルスとの時間をかけた戦いになる。散発する感染者や集団感染に効果的な対策を行わなければ、人々の生産活動や生活への影響を最小限に抑え、最も少ない社会コストで、最も大きな成果を上げるようにすることはできない」と説明する。
そして、「新型コロナウイルス感染症対策はいったん確立されると永遠に変わらないというわけではなく、順を追って一歩一歩進めていくことになる。新型コロナウイルスワクチンには、重症化や死亡を予防する高い効果がある。ワクチン接種は能動的な免疫対策であり、ワクチン接種の展開を加速させれば、集団免疫を獲得することができる。しかし集団免疫は一気に獲得できるわけではない。集団免疫を獲得するまでは、海外からの流入や国内でのリバウンドを阻止する対策を維持しなければならない。現行の対策を維持するかは、世界の感染拡大状況やウイルス変異の状況、感染症の深刻さの程度の変化、中国のワクチン接種率など、多くの要素次第」との見方を示した。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年11月20日