北京、上海、広州などの一線都市で、数年間がんばって戦った後、更なる発展を求めて、地方都市に拠点を移している若者が少なくない。今、世間で言われている「北京、上海、広州脱出」とはこのことである。この現象の背景には急速な「都市化」が作用を及ぼしていると、任遠教授は説明している。
一線都市の生活コストの高さと競争社会のストレスの所為で、「移民」の生活環境は悪化し、地方から出てきた若者たちの生活は幸せとは程遠いものとなった。これが一部の人達の「脱出」を招いた原因であると、復旦大学人口研究所の任遠教授は述べている。
中国都市発展研究会が2009年に発表したランキングもこの観点を裏づける結果となった。「都市総合競争力ランキング」では、北京、上海、広州などの一線都市は全て、上位にランクインしているのに対し、「幸福感が感じられる都市ランキング」では、揃ってランク外だった。
「移民」の生活環境の悪化は急速な「都市化」が原因にあると、任遠教授は説明している。
70年代から90年代にかけて、出生児数は1600万から2500万に増えている。このように人口は着実に増加し、競争社会の深刻化に拍車をかけている。教育、衛生などの公共サービスや就職の保障なども圧迫される一方である。
都市化が急速に進んだ、北京、上海、広州のような一線都市ほど、「移民」の生活環境の悪化が目立っている。近年、このような都市での不動産価格の高騰は目を見はるものである。そして、大量の人が流入したが、公共サービスの発展は到底追いつかず、満足のいく教育や医療を提供できなくなった。収入レベルが高くない人や、地方からの労働者は特に十分な公共サービスを受けることが出来ず、若者たちは一線都市での生活にますます不安を感じるようになったのである。
国務院発展研究中心企業所の許召元副研究員の意見では、一部の若者が「北上広から脱出」するのは、都市経済の発展が有る一定のレベルまで達成されたことを示す証拠である。その為、一線都市には仕事のチャンスが多く、生産効率も高いので、人材は一線都市に集中してしまうのだ。しかし、都市経済の発展が一定レベルに達すると、大都市の「人口ラッシュ」もひどくなり、人口がどんどん過密になっていく中で、生活コストも生産コストも高くなるばかりである。こうなると、企業はよりコストが低い地域へと移転をはじめ、それにつれて、経済発展も地方へ拡散していく。同じように、一部の人々も大都市での高価な生活コストに耐え切れず、中小都市へと移っていくとういう訳である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年8月2日