過去数年来、中国人移民の数は増加傾向にある。国務院僑務弁公室は6月16日、海外在住の華僑・華人の数はすでに4500万人を超え、中国は世界最大の移民輸出国となったと発表した。
移民数の増加は新たな移民ブームの到来を意味するのか?香港大学アジア研究センターの閻靖靖・博士は、いわゆる新ラウンドの移民ブームは確実に存在している可能性があるが、移民数が単に増加しているだけでなく、重要なのは新移民が高学歴、高技術、高コストなど、従来の移民とは大きく異なる点だと指摘する。
ある論評は、新移民ブームは国内エリート層の大規模流出をもたらしているとしている。「エリート層流出」説について、在米歴4年になるジョージ・メイソン大学公共政策学科の田方萌・博士は疑問を唱える。田博士は、人材流出については「帰国率」指標、すなわち移住者の中での帰国者の占める比率にも注目すべきだと説く。帰国率の算出は一般的に、当期の出国者数を分母に、帰国者数を分子とし、両者は必ずしも同一人物とは限らない。出国者数の増加ペースが早ければ、帰国率の分母拡大ペースは分子を上回る可能性がある。よって帰国者数が年々増加した場合でも帰国率は低下するが、これは海外への人材流出が増えていることを必ずしも意味しない。
カナダ当局がこのほど発表した「カナダと中国の人材流動報告」によると、経済発展が急速に進む中国にカナダ国籍を取得した多くの中国移民が帰国しており、中国大陸部および香港に居住するカナダ人はすでに25-30万人となり、その多くを高学歴者が占めるという。カナダ連邦移民局の最新統計では、数年来新たに国籍を取得した移民のうち中国人は、2005年の首位から2位に転落している。事実上、2006年から2009年にかけて、中国人移民の国籍申請者数は年々減少しており、4年間での減少幅は54%に達している。エリート層流出は確かに存在するが、それほど恐れることでもない。
注目すべき現在の課題は、中国がいかに人材を留めるかだ。海外在住のハイレベル人材にとって、急速に発展する中国は彼ら・彼女たちに無限の空間を提供する。グローバル化という挑戦に直面し、ひとつの成熟した社会が思慮すべきは、いかに自身の吸引力を増強し、国民に出国を望ませず、海外エリートを引き戻すことにある。
「人民網日本語版」2010年8月10日