国務院常務会議が1日に開催され、個人税徴収問題が討議された。両大会(全国人民代表大会・全国政治協商会議)に出席した代表委員らは、個人税改革の加速は、中央政府の所得公平化など民生問題に対する高度な重視の現れと認めた。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
30年以上にわたる改革開放を経て、中国の国民所得水準は大きく向上したが、国民所得分配に依然不合理が存在、中でも「所得格差」「利益独占」「国民共富」が三大焦点となっていることを見逃してはならない。代表委員らは、所得分配制度改革の推進を加速、分配構造を合理的に調整し、一般市民らの「ケーキ」を公平に切り分ける必要性を述べた。
「所得格差」:富の「ケーキ」の分かち合い
「新華網」がこのほど行った2011両会アンケート調査では、「ケーキ」の分かち合い、所得向上がネットユーザーの最も関心を集める話題だった。
「個人税改革・調整は、国家が所得分配格差により関心を寄せ、民生により注目していることを示している」。全国政協委員を務める河北省農林科学院の王海波・副院長は、現在の所得格差の拡大は、経済発展における最も突出した矛盾のひとつとなっており、個人税徴収により現れる貧富の逆転がより関心に値すると認める。徴収水準を引き上げ、個人税改革を推進することは、低所得者層の利益への配慮であり、所得分配格差を転換、社会公平実現への重要な措置、と王副院長は示す。
全人代代表を務める中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡書・E所長は、現在の中国国内の業界間の所得格差は、市場競争により生まれたものではあり得ず、行政と業界の独占がもたらした部分があると指摘する。
全国政協委員を務める中国(海南)改革発展研究院の遅福林・院長は、幕開けの年に個人税改革を進めることは、中央政府が「十二五:第12次5カ年計画(2011-2015年)」期間中に民生にさらに関心を寄せ、国富と共に民衆の富も求め、発展の成果を国民全体に譲る鮮明な発想と語る。
「利益独占」:全国民にさらなる恵みを
「一連の状況は、今の我国国民の所得分配格差の不合理な現実を示している」。全国政協委員を務める商務部・元部長助理の黄海氏は、一部の企業が独占的地位を利用し大幅な利益を獲得しているが、これらの利益は最大限、国民が共に享受するべきとしている。
国務院国有資産監督管理委員会(国資委)の邵寧・副主任は先ごろ、国務院新聞弁公室記者会見の席上、「国有企業の資産は国家に属し、人民の貯蓄に属し、国家に財政が必要となれば、動かすことはいっこうに構わない」と述べた。
「良好な監督制度がなければ、これらの企業による『貯めても動かさない』を誰が保障できるのか?」。黄海氏は、国有企業のうち独占企業の財務体質に対する予算管理をさらに強化し、給与以外の職務支出・福利などを厳しく監督管理する必要性を提案している。
蔡所長は、独占企業は大量の富を創造し、国家の社会発展のために代替不能な責任を担っており、この点については社会全体が肯定するに値すると認める。しかしその利益納税の割合が低すぎるのではないかという。独占利益を納税あるいは利益分配の形で公共財政予算に納め、教育・医療・保障性住宅など社会公共製品分野に充てるべき、と蔡所長は提案する。「さもなくば利益分配が無期貯蓄となり、国民全体に行き渡らない」。
「国民共富」:改革と発展の目標
中国は昨年、GDP総量が日本を超え、世界第二の経済体となり、国家財政収入は初めて8兆元を突破、国家は日増しに強く、豊かな道を進んでいる。
「しかし国民の所得の伸びと国家財政の伸びの歩調は合っていない」。遅院長は、中国の国民可処分所得の国民所得分配に占める比率は、20世紀末の70%から、現在では約50%にまで落ち、労働者報酬の初期分配の比率は、1995年の51%から今では約30%に低下したと述べる。
「社会の富というこの『ケーキ』を切り分ける際に、企業所得の伸びはさらに鮮明になり、政府収入は回復的成長をみせている。だが国民所得比率の向上にはいまだ非常に大きな空間がある」全国政協委員を務める財政部財政科学研究所の賈康・所長は示す。
国務院発展研究センターのデータによると、過去2年間、中国の教育・医療・社会保障の3項支出が政府総支出に占める比重は40%未満で、国民1人平均GDPが3千-6千ドルの同水準の国家に比べ、10ポイント低い。
「人民網日本語版」2011年3月3日