アメリカ国籍を取得するのは何よりも難しい。これはこれまで無数の中国人(注:この文章では中華系の人のことを指す)が感じてきたことだ。いつの日か、アメリカ国籍取得は中国人にとって夢になっていた。しかし、ここ数年、これまで寵愛を受けてきたアメリカ国籍の人気がひそかに下降してきている。米紙「僑報」は3月27日、署名付きの文章で、中国人に対するアメリカ国籍の魅力は下降していると指摘した。
移民にとって、アメリカ国籍を取得するメリットは多い。ビザなしで世界各国へ行けること、家族の移民申請の資格を持てること、選挙権、参政権を持てることなどだ。これら一連の要因により、各世代の中国人はアメリカ国籍を取得しようと躍起になっていた。アメリカ国土安全保障省が2010年に公表したデータによると、2000年から2009年まで、35万人近い中国人がアメリカ国籍を取得した。また、別の試算によると、アメリカに住む4分の3の中国人がアメリカ国籍を取得しているという。
中国人の有権者の増加と参政意識の高まりに伴い、中国人のアメリカ政界における影響力は増してきている。しかし、移民の主流社会への同化能力は低く、中国人による参政の熱意は相対的に低い。今年2月、アメリカ華人全国委員会とメリーランド大学アジア系アメリカ人センターが共同で発表した「2011年全米華人人口動態研究報告」によると、就職動向に関して、華人の82.4%が私営企業で働き、政府関係機関で働く人はわずか14.1%だという。在米中国人のアメリカ国籍取得を奨励することは、このような状況を改善するカギとなる。
しかし、アジア太平洋地域の中国人組織がアメリカ国籍取得を奨励する一方で、海外に住むアメリカ国籍の中国人がアメリカ国籍を放棄しているのはなぜだろうか?アメリカ政府がアメリカ国民に対し、海外で得た収入の所得税支払いを義務付けたことと資産申告を義務付けたことが主な原因だろう。これにより、海外でアメリカ国籍を維持するコストは高くなり、また、面倒も多くなることから、その負担に耐えられなくなったのだと考えられる。2009年にアメリカ国籍を放棄した香港銀行のある従業員は「すでに中国で生活して長くなるが、アメリカ政府に支払う税額と子供の学費が同じくらいになったため、アメリカ国籍を放棄することを決めた」と明かした。
移民手続きと税制を専門とするウィザーズ法律事務所(香港)のクラウス氏は「アメリカ国籍をもつ中国人は、自分の負担する税額と申告義務を目の当たりにし、確かに負担が重いと感じるようだ」と述べた。クラウス氏によると、アメリカ国籍あるいはグリーンカードの放棄手続きに来る顧客の数は非常に増加しているという。アメリカの政府刊行物「連邦公報」によると、昨年は1500名を越えるアメリカ人がアメリカ国籍を放棄したという。
アメリカに住む外国移民の多くがアメリカ国籍取得を望んでいる。その一方で、海外に住むアメリカ国民と少数の富豪が税負担に耐えられず、アメリカ国籍を放棄している。この2タイプの人々の大部分が中国人である。中国人によるアメリカ国籍の取得と放棄は、アメリカ国籍の移民に対する魅力を示す一方で、不況や税負担により、アメリカ国籍が魅力を失いつつあることも示している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年4月1日