1986年の原発事故で、チェルノブイリ原発から半径30キロ以内の地域は隔離されたが、「善後処理」にあたる作業員は隔離地域に入って作業をせざるを得なかった。セルゲイ・クラシコフさんはそのメンバーの一人で、毎月12日は電車に乗ってこの危険な地域を通り過ぎ、仕事場である石棺と呼ばれるコンクリートの建造物に覆われ、廃墟と化したチェルノブイリ原発の4号炉に向かった。
クラシコフさんの仕事は「石棺」内にある原子炉の「安全」を確保することで、雨の日に原子炉に入り込んだ放射性汚染水を取り除かなければならなかった。この作業は非常に重要で、原子炉に深く埋められた200トンもの核燃料と使用済み核燃料を、乾燥した状態に保つ必要がある。使用済み核燃料は今でも静かに「石棺」内に横たわっているが、本当の「廃棄物」ではない。数年前、科学者らが原子炉内に放射線測定器を入れ中の放射線量を測ったところ、1時間当たりおよそ100シーベルトの放射線量が測定された。これは原発で働く作業員が1年間に浴びてもよい放射線量限度の2000倍の数値に相当する。
◆高給で高リスク
クラシコフさんは定年退職するまでそこで8年間働いた。彼の後を引継いだ作業員も同じように退職するまで勤め上げた。こんな危険な仕事を続けたのは、給料が高いためだ。彼の平均月収は2500グリーヴナ(約500ドル)で、ウクライナの首都キエフの平均月収の2倍に相当する。現在、クラシコフさんのような仕事に就いている作業員は約3400人いる。
しかし、10年の設計寿命しかない「石棺」には早くも亀裂が入っている。現在、ウクライナは設計寿命が100年ある金属の外殻を建造しようと資金をかき集めているが、では、100年後はどうするのか?
もちろんその答えはクラシコフさんにもわからない。「100年?その時になって解決策が考え出されるかもしれない」。
「中国網(チャイナネット)日本語版」2011年4月26日