◇変質しつつある「月餅文化」
業界関係者は、中国系、外資系を問わず各企業が「月餅」をめぐって、しのぎを削っている理由として▽月餅は中秋節の期間のみ大量生産されるが、利益率が非常に高い▽中国で中秋節は国家から無形文化財に認定されるほどの伝統的祝日で、期間中ギフトとして月餅を購入する人が圧倒的に多いことを挙げている。
一方、月餅を販売する各業者からすると、月餅の価格高騰はなにも首をかしげるようなことではないという。月餅は他の商品と違って季節的なもので、市場にもニーズが存在し、決して荒稼ぎをしているというわけではないというのだ。
この問題に関して、中国の「消費者権益保護法」は「価格開放とは、やみくもに値段をつり上げるということではない。もし無制限に値段が高騰するとすれば、『豪華』『極値』『盛宴』と呼ばれ、それが『価格は質に見合っているべきという、公平交易』の原則に反しているのであれば暴利の疑いがある」と明確に述べている。
実際に、洋風月餅の登場から、中秋節に普段お世話になっている親戚や友人に月餅を送り、「円満」を願うという習慣が別の方向に向かい始めている兆候がうかがえる。「これは月餅を付け届けとして贈る風潮がもたらした『中国式浪費』の表れ」と社会学分野研究の専門家である中国海洋大学法政学院の崔鳳副院長。「月餅を送る習慣は、今やその趣旨が変わってしまった」と嘆く。
率直に言って、現在人々の生活水準は確かに向上したが、中秋節に高級月餅を自分で買って伝統的祝日を楽しもうと考える人などほとんどいないだろう。昔の人はというと、人と人のつながりを重んじていたのに対し、今では形式を重んじる社会へと変化し、その中で月餅はいまや欠かすことのできない「贈答品」へと姿を変えてしまった。
まん円の月餅には、「家庭円満」の願いが込められている。しかし洋風月餅の姿は、中国の伝統文化とはかけ離れている。「中秋節の本来の姿を取り戻すには、月餅を付け届けの道具にしないことが必要」と専門家は指摘する。
「人民網日本語版」2011年9月9日