2月14日のレコードジャパン・サイトの報道によると、首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長が奨学金問題(留学生を含まない)をめぐり、国を相手取った集団訴訟を行なったことが明らかになった。その理由として、学生時代の「奨学金ローン」の返済が負担になり、多くの人が卒業後も高学歴ながら低収入という苦境に陥っていることだ。
経済協力開発機構(OECD)加盟国30カ国のうち、「返済の必要のない給付制奨学金制度」があるのは28カ国にのぼり、大学授業料の無償化は15カ国で実施されている。一方、日本は大学の授業料が高いだけでなく、就職後もローン返済を行なわなければいけない。これに対し、非常勤講師組合は、日本の貸与制の奨学金制度は、国際人権規約に定められている「中等・高等教育の無償化条項」や「すべての者に対して均等に教育の機会が与えられるものとすること」などに違反し、道理に反している「非常識な制度」であると指摘している。
日本は中学まで義務教育であり、高校から学費を払う必要がある。高校と大学に通わせるには1000万円(約80万元)ほどかかるため、家庭の経済状況によって進学できない状況が生じる。また、日本には奨学金制度はあるものの、利子があるローンと変わらず、返却が義務付けられている。卒業後の厳しい雇用状況を心配する学生らは、奨学金の申請をすること自体躊躇してしまうのだ。
非常勤講師に対して行なったアンケートによると、奨学金の申請を行なった者のうち、1000万円の返済を抱えている博士号の学生も少なくないという。彼らの平均年齢は45.3歳で、平均的な年収は306万円、年収が250万円に満たない者は4割に上るという。非常勤講師の仕事は安定していないため、「高学歴のワーキングプア」となり、返済できる見通しも付かずに借金を延滞したまま、貧困のスパイラルに陥ってしまうのだ。彼らのような「延滞困難者」に対し、日本政府は最長で5年間の猶予制度を設けており、5年を過ぎれば年利10%の延滞金が課せられる。また、文部科学省は、2010年4月から延滞したものに対し、個人信用情報機関に個人情報を通報してブラックリストを作成するなど、強制的な処置を採っている。
政府の不条理な政策に対し、首都圏大学非常勤講師組合は、「政府の公的財政支出とGDPの割合を見ると、日本はOECD28カ国中最下位で、世界で最も『教育を自己責任』としている国である」と指摘。「つまり、政府は『個人的な事情は国には無関係である』と考えているということだ。また、政府の実施している延滞者へのサラ金のような強制的な返済処置は『貧困は罪』と考えているも同然で、これが学術研究の発展の大きな妨げになる事は間違いない」と訴えている。非常勤講師組合の訴訟は勝訴するのだろうか。法律は公正に裁きを下す事ができるかが期待される。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年2月15日