▽「在宅養老」推進の動き
草案では、「老人は自宅で老後を過ごすことを基本とし、国家は、『在宅をベースに、地域を拠りどころとし、関連サービス機関が支える社会養老サービス体系を構築・完備する』という方針が、初めて明確に示された。この規定について、全国人民代表大会常務委員会委員を務める中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡◆所長(◆は日へんに方)は、「今回の修正草稿で打ち出された『在宅養老』モデルは、極めて重要な変化であり、海外の多くの国家で実施されている方向に中国も近づこうとしている」と指摘した。
蔡所長は「中国が『在宅養老』路線に転じたことは、極めて現実的な選択といえよう。都市部では土地の値段が跳ね上がり、政府がどんな支援策を出そうとも、最終的に提供可能な養老機関のキャパシティーでは、膨大な数の高齢者のニーズを満たすことはできない」とコメントした。
現状を如実に示すデータがある。国内で現在、高齢者を受け入れることができるベッド数はわずか19.7床、老人ヘルパーの国家資格取得者は年間わずか2万人、全国のヘルパー総数は100万人にも満たない。北京や上海など大都市では、数多くの高齢者が高齢者施設への入所を待っているが、入所を待たずして亡くなる人も多いという。
社会高齢者サービスのコストがここ数年高騰しており、高齢者の精神的な問題を解決することができないでいるのが現状だ。在宅養老のメリットを強調し始めた国家も多く、家庭で高齢者の面倒を見る世帯には、政府からの補助金が付与される。
例えば、シンガポール政府は優遇政策を設け、子女が年老いた両親と同居することを奨励している。シンガポール住宅開発庁(HDB)は、公共住宅を割り当てる際に、三世代同居世帯に対して価格面での優遇および優遇割り当てを実施している。韓国では、それぞれが住宅を保有している子女と両親がどちらかの家に同居した場合、空いた家を賃貸・販売する際の所得税を控除する優遇措置を講じている。
蔡所長は「草案では、地域の高齢者サービスが、在宅養老を実現するための重要な支えとなることが明言されている。しかし、地域高齢者サービスの構築に絡む規定がまだまだ不十分だ。地域高齢者サービスは、高齢者のニーズを本当に満たすものでなければならず、現在行われているようなカルチャー・スポーツ活動や娯楽サービスではない」と強調した。また、草案には、高齢者保障の内容、レベル、財源に関しても規定を設けるべきだと提案した。(編集KM)
「人民網日本語版」2012年7月6日