夜8時、9時の東京、次々とオフィスビルから出てくるサラリーマンは、昼間どんなに仕事で疲れていてもこの時間になると、体内時計が確実に「居酒屋の時間」の信号を発するらしい。
日本の料理屋には一般的に得意分野があり、それぞれの店は一種類の料理を出す。例えば、寿司屋は寿司と刺身だけ、天ぷら屋では絶対手羽先は食べられない。最も実際な問題は、料理屋では料理1品が1000円から数千円もすることだ。多くの種類の料理を食べたくても、胃袋は受け付けても費用がかかりすぎる。そんな私にとって、居酒屋はまったく「救いの神」だ。料理の種類が豊富で、味は美味く、1品の量はさほど多くない上に値段も安い。私たちはよく晩御飯を食べずに居酒屋に直行した。多く種類の料理を味わうためにおなかを空かして行ったものだ。
鶏の唐揚げ、ししゃも、ハマグリの酒蒸し、キムチ、焼ギョーザ、玉子焼き、お茶漬け、親子丼、おでんなど。人気ドラマ「深夜食堂」では一話ごとに1つの料理について心温まるストーリが描かれているが、これらの料理は日本の家庭料理にあまり出てこないもので、居酒屋によくある料理なのだ。居酒屋の料理は、材料、作り方、盛り付けなどはすべて料理店、寿司屋のようには精致でも追求もされていないが、素朴で美味しく、温かい誠意が感じられる。実家に帰ったときに母親が作る料理のように、高い材料ではないし、複雑な技法も要らないが、心を込めて造ってあって、これと酒を飲めば、おなかも心も落ち着いて心地よくなるのだ。