注意したいのは、例えば「動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか」(著者:津田大介)や「ブログ論壇の誕生」(著者:佐々木俊尚)など、「SNS新左派」の代表作の多くが「革命」や「誕生」などを主題にしており、作者のSNSについているファンも数万を超えている点だ。これは、日本社会の「左派」は一定の勢力があることを示している。
しかし、こういったインターネット上の「宣教師」たちが発する賞賛の声に反して、インターネットの暗部ばかりに目を向ける作家も多く存在する。「ウェブはバカと暇人のもの」の著者、中川淳一朗氏は「賞賛する声と反して、ネット上には陰惨で、攻撃的で、悪意に満ちた言論があふれており、各掲示板にも『ネット右翼』の保守的・排他的な思想がはびこっている。『アラブの春』のような革命は、SNSではなく、集会に参加した人たちが起こしたのだ」と語る。
記者の井上俊幸氏は「インターネットへの過度な依存はテレビ、新聞、書籍などの伝統メディアの権威を失墜させた。しかし、伝統メディアの影響力は決してなくなったわけではなく、ネット上で発言する人もほとんどが伝統メディアの言論を引用したり、それに自分の評論を加えたりしている。結局は今でも伝統メディアの影響を受けて、感情的なものを書いている」と述べている。