中国で「国史専門家」として知られる南京大学の張憲文・教授(南京大学南京大虐殺史研究所所長)は6日、自らが執筆・監修した「南京大虐殺全史(計14章、110万字)」を発表。北京で開催された発表会で、戦時中に旧日本軍が中国や朝鮮などの占領地で慰安所に強制連行し、性の相手をさせた女性たちのことを、「慰安婦」ではなく、「性奴隷」と表現すべきと主張した。中国国営の「新華社通信」のウェブサイトが報じた。
張教授は「『慰安婦』は、旧日本軍の角度から見た呼び方。しかし、実際には、ほとんどの被害者女性が騙されて連行されたり、性の相手を強要されたりしたため、『慰安婦』ではなく、旧日本軍の『性奴隷』が正しい」と指摘した。
抗日戦争(日本名・日中戦争)初期の1937年12月に旧日本軍が南京市を占領した際、約6週間から2カ月にわたって中国軍の便衣兵、敗残兵、捕虜、一般市民などを殺したとされている。張教授が今回発表した「南京大虐殺全史」は、日本側のいう「従軍慰安婦」を「性奴隷」と表現した中国初の学術書で、南京大虐殺に関して最も整った資料や研究を提供している。同表現に関して、張教授は「旧日本軍の屈辱的な扱いを受けた中国などの女性が『人権を侵害』されたことを強調するため」と説明している。
旧日本軍が、占領地域で犯罪の防止と治安維持のために、軍人専用の「特殊慰安所」の設置を大々的に始めたのは南京攻撃よりも後の1938年以降で、当時強姦が相次いでいたため性病の流行を恐れた旧日本軍は南京を侵略していた各部隊に「慰安所設置」に関する文章を通達。日本だけでなく、中国などの女性も欺くなどの手段で「慰安所」に連行し、軍人の性の相手をさせた。
アジア最大の旧日本軍の慰安所跡地が南京市白下区の利済巷にあり、当時中国や日本、朝鮮などの「慰安婦」200人以上がここにいたとされる。南京市は、ここを「慰安婦歴史陳列館」とする計画だ。