柔道は日本の武術の中でも特別な位置にあり、柔術が変化・発展して成り立ったものだ。1882年、「柔道の父」と呼ばれる東京帝国大学(当時)の学生だった嘉納治五郎が、当時流行していたさまざまな流派の柔術の精髄をまとめ、現代の柔道を設立した。そして同時に柔道家の訓練の場として講道館を創建した。百年以上、日本の「柔道の聖地」として講道館は新しい技を柔道に取り入れ、革新を繰り返しながら一歩ずつ世界へ広がっていった。
だが、産経新聞の取材で講道館の驚くべき事態が明らかになった。日本柔道発の新しい技はすでにかなり前のことで、ここ数十年は実際上、新しい技はなにも生み出されていなかったというのだ。
2012年に開催されたロンドン五輪で、日本チームは柔道で金メダルを取れなかった。これと日本の大手家電メーカーが陥っている巨額負債の時期が見事に重なった。日本人の多くは誇りとしてきた柔道と家電業界の衰退を「日本凋落の象徴」と受け止めた。
パナソニックやシャープなどの巨額の赤字を出した家電メーカーと柔道界の状況は同じだ。革新性のある製品や技術を生み出せないから、衰退に向かったのだ。