10年間にわたる銀行業務の経験が、王岐山氏を現代の金融を扱う際にますます成熟させ、彼を政界における金融専門家とする基礎を築いた。

3月17日、59歳の王岐山氏は3カ月の「蟄居」の後、国務院副総理に任命された。これより前、国内外のメディアは早いうちから「王岐山氏が間もなく国務院副総理に就任するだろうが、彼は銀行・証券業改革においてよい結果を残している」（FT中文網）と推測していた。

業界から「金融市場での直接的な体験をもつ」と認められた王岐山氏に再び関心が集まった。

1980年代の初め、王岐山氏はすでに中国の金融改革の前線に立っていた。1988年に中国農業信託投資公司の党委員会書記、総経理に就任して以来、彼は金融分野に直接かかわってきた。

王岐山氏の履歴には特筆すべきことがいくつかある。

1993年6月、中央銀行（中国人民銀行）副行長に在任していた期間、彼は中央銀行の金融監督・管理強化を主導し、無謀な資金貸付や短期融資などの規定違反の経営行為を全面的に整理し、インフレ圧力が劇的に高まり金融秩序が混乱した当時の局面を、一挙に転換させた。

1994年には中国建設銀行の行長に就任。彼の主導のもとに建設銀行は米国の大手投資銀行モルガン・スタンレーと合弁し、中国大陸初となる真の投資銀行「中国国際金融有限公司」を設立した。

10年間の経験が現在の王岐山氏の基礎を固めた。

だが、同氏が世界的な称賛を浴びたのは、1997年から彼が広東省の常務副省長に就任していた期間だ。飛びぬけた手腕で130社余りの銀行債務にかかわる広東国際信託投資公司（GITIC）破産という難問を適切に処理したのだ。この措置は業界から「パーフェクトに近い」と讃えられ、広東省の金融リスクを解消しただけでなく、中国の金融改革にも深い影響を与えた。この仕事で得た金融経験に加え、米、韓などの国々にとっても金融リスク解消手段の手本となり、やがてやって来る粤海企業集団（GDE）の債務再編問題の中で、彼はさらに異彩を放った。

2年後、王岐山氏は北京に戻り、国務院経済体制改革弁公室の主任に就任、ここにしばらく留まったのち、02年11月に海南省省委員会書記に就任、再び経済改革の現場に直接臨むことになる。

当時の海南省は、不動産バブルがはじける真っ只中にあり、そのことで経済は低調だった。王岐山氏は就任後1カ月のうちに「不良資産の海南省による自己処理」計画を打ち出し、中央政府による不良債権処理の優遇策を海南省は享受しないことを約束するとともに、一連の発展措置により現地の経済環境を改善し、海南省が直面していた経済上の難問を根本的に解決した。

半年後、王岐山氏は再び緊急に抜擢され、北京市の市長代理を務めることになる。その時、彼が担うべき重責は、SARSの予防・治療と2008北京五輪の資金活動という二重の任務であった。

07年11月末、人々から親しみをこめて「火消し隊長」、「難局打開の達人」と呼ばれた王岐山氏は北京市市長を退任、新たに中央政治局委員に昇格する。しかし、暫しの休息はより大きな期待を意味していた。

前途は果てしなく長いが、「高級経済師」の肩書きを持つ王岐山氏が新たな道程で、いかに「火を消し」「難局を打開」するか、期待を込めて注目したい。

王岐山氏の略歴

王岐山、男性、漢民族、1948年7月生まれ。山西省天鎮出身。1983年２月共産党に入党、1969年1月就職。西北大学歴史学部歴史専攻課程卒業。大学卒学歴、高級経済師。

現職　中央政治局委員、国務院副総理、党グループメンバー。

1969～1971年　陝西省延安県馮荘公社知識青年

1971～1973年　陝西省博物館に勤務

1973～1976年　西北大学歴史学部歴史専攻課程で学ぶ

1976～1979年　陝西省博物館に勤務

1979～1982年　中国社会科学院近代歴史研究所実習研究員

1982～1986年　中央書記処農村政策研究室、国務院農村発展研究センター処長、副局クラス研究員、連絡室副主任

1986～1988年　中央書記処農村政策研究室正局クラス研究員、国務院農村発展研究センター連絡室主任兼全国農村改革試験区弁公室主任、国務院農村発展研究センター発展研究所所長代理、所長

1988～1989年　中国農村信託投資公司総経理、党委員会書記

1989～1993年　中国人民建設銀行副行長、党グループメンバー（1992年9月～11月、中央党学校省・部クラス幹部研修班で学ぶ）

1993～1994年　中国人民銀行副行長、党グループメンバー

1994～1996年　中国人民建設銀行行長、党グループ書記

1996～1997年　中国建設銀行行長、党グループ書記

1997～1998年　広東省党委員会常務委員

1998～2000年　広東省党委員会常務委員、副省長

2000～2002年　国務院経済体制改革弁公室主任、党グループ書記

2002～2003年　海南省党委員会書記、同省人民代表大会常務委員会主任

2003～2004年　北京市党委員会副書記、市長代理、北京オリンピック組織委員会執行主席、党グループ副書記

2004～2007年　北京市党委員会副書記、市長、北京オリンピック組織委員会執行主席、党グループ副書記

2007～2008年　中央政治局委員

2008～　中央政治局委員、国務院副総理、党グループメンバー

中国共産党第15期中央委員候補、第16期、17期中央委員、第17期中央政治局委員。

「北京週報日本語版」　2008年3月21日