霍建崗 中国現代国際関係研究院
筆者はかつて中日関係を大河にたとえ、長年の氷結を経た後、2006年に安倍前首相は「氷を砕く旅」という訪中を実現し、2007年の春に温家宝総理は「氷を溶かす旅」という訪日を実現し、同じ年の末における福田首相の訪中は中日両国間の「戦略的互恵関係」という大きな船を出航させた。今回の胡錦涛主席の訪日は「戦略的互恵関係」という大きな船の積荷をさらに充実させると同時に、この大きな船の航行の方向を正しく把握し、中日関係の長期の発展のために確固とした基礎を打ち固めるものとなった。
戦略的互恵関係の中味を充実させることは中日双方の共通の願いである
1972年の中日国交正常化いらい、中日関係の置かれた環境には大きな変化が生じ、世界が冷戦時代の政治的対抗から冷戦後の経済競争の時代に入った。中日両国の国力の対比にも天地をくつがえすような変化が起こり、中国は経済的に比較的弱い国から世界経済の中で全局に影響を及ぼす力を持つ大国となった。4月30日、河野洋平日本国衆議院議長は中国を積極的に評価し、「中国経済の急速な発展は世界じゅうの人々を驚かせ、そしてこの発展はさらに続くであろう」と見ている。
ここ10数年らい、日本の経済は長期にわたって停滞し、中国と日本の間の開きは絶えず縮まっている。東アジアの歴史において初めて2つの強国がともに前進する状況が現れ、日本側はいささか挫折を味わうことになった感じがあり、このため、中日関係に多くの問題が現れるとともに、20世紀の最初の6年間に、最低点に落ち込んだ。
2006年の安倍前首相の訪中をメルクマールとして、日本側は中国を直視し始めるとともに、中国と「戦略的互恵関係」を構築する共通の認識を達したが、しかしながら安倍氏は依然として「価値観外交」と「自由、繁栄の弧」などという中国を封じ込める政策を放棄しょうとせず、中日関係の中に依然として「氷の塊」が存在することになった。昨年9月に日本国首相に就任した福田氏は長年らい日本首相の中でまれに見る戦略観点をもつ政治家であり、氏はアジアを重視し、中国を重視する外交政策を打ち出し、「価値観外交」と「自由、繁栄の弧」などなんの意義もない政策をダナ上げし、中日のウィン・ウィンを認め、世界における中国の重要な役割を認めることになった。
日本のメディアによると、4月中旬に、福田首相はかつて伊吹文明自民党幹事長が胡錦涛主席に親書を手渡すよう求め、親書の中で福田首相は中国が国際実務の中でさらに大きな役割を発揮することを願い、同時に両国の戦略的互恵関係を充実させることを望むという強い願いを表明している。日本側の実務的態度は中日関係の発展にとってプラスの条件となっている。
胡錦涛主席の今回の訪日は、中日双方が経済協力、省エネと環境などの面における互恵協力について話し合うと同時に、青少年の民間交流をくり広げ、戦略的互恵関係のために新しい中味を充実させ、中日友好を引き続き発展させていくことになると見られている。
長期にわたる安定した中日関係の構築は双方の共通の歴史的課題
胡錦涛主席の今回の訪日の意義は「戦略的互恵関係の内容を実行に移し、2008年を本当の意味で中日関係が「飛躍的に発展する年」にするばかりでなく、戦略の次元から、長い目で、日本側と両国関係の今後の発展の青写真を共に画き上げ、新しい情勢の下での両国関係発展の重要な指導的原則を明らかにし、両国の中長期の実務的協力の方向と重点分野を確立し、中日関係のため長期安定の発展の骨組みを構築するものである。
ここ数年来、中日関係には多く波風が起こり、その原因は両国関係に安定した骨組みが欠けていたことにあった。日本の政治面のわずかな変化はいずれも中日関係に影響をもたらした。例えば、小泉元首相が何度も靖国神社を参拝したことは、両国のトップ間の相互訪問を停滞させ、政治関係の冷え込みは経済と民間の交流に影響を及ぼし、それによって中日関係全体に悪影響をもたらした。ほかでもなく、この教訓があるため、中日双方はさらに長期にわたる安定した骨組みの構築を重視することになった。
長期にわたる安定した骨組みは多くの内容を充実させることを必要とし、2006年12月、中日共同歴史研究専門家委員会が発足し、そして『歴史研究についての共同レポート』を完成し、それによって中日関係の持続的かつ健全な発展を促すことが考えられている。
2007年4月、温家宝総理が日本を訪問した際、当時の日本国首相の安倍晋三氏と共同で中日経済のハイレベル対話のスタートの式典を主宰し、そして同年12月に第1回対話が催された。双方はマクロ経済政策面の交流、地域協力の強化などについて幅広く意見を交換した。経済交流のメカニズム化は必ず長期にわたる安定した中日関係という大きな船の「客室を安定させる石」となるであろう。
中日双方はともに関心を持つ食品安全の議題において、中国側も積極的に日本側と話合いを行い、日本側と食品安全をめぐって長期にわたる効果的なメカニズムを構築することを願っている。問題が発生した際に、枠組み内で解決を求め、協調が滞ることにより中日関係の全体に影響を及ぼすことを避けることにしている。
長期にわたる安定した関係のカギは、双方が共通の目的、共通の利益を持ち、互恵を前提として発展の潜在力のあるカギとなる分野を確定し、こちらの中に相手がおり、相手の中にもこちらがいる状況を作り出し、局地的問題のために全般的な関係の後退を招くことを避けなければならないということである。
ともに努力することによって中日関係に存在する「問題」を解決しなければならない
中日関係の中にはもちろん問題が存在しているが、問題は必ず難問ではなく、問題は話合いを通じて解決することができ、難問は苦境にあることであり、それを取り払うためのエネルギーと代価は非常に大きい。
東中国海の問題は問題であるが、難問ではなく、日本の一部勢力が東中国海の問題を中日関係における「核心となる難問」に誇張していることは下心のあるものであり、その目的は「片方だけのウィン」のためである。そのような考えは今の世界の流れにも合わなければ、日本の国益にも合わない。東中国海の問題において、中日双方はすでに実りのある話合いを行い、今後必ずや双方とも受け入れられる案を探し当て、ウィン・ウィンを実現することができる。日本側も両国間の新しい協力の骨組みを構築し、問題の解決のためにそれ相応の努力を行うべきである。
たとえば、台湾問題も中日関係の中の問題の1つである。ここ数年来、日本の右翼勢力は陳水扁当局を後押しし、台湾問題を中日関係の一層の発展を妨げる障害物に変えた。昨年末に福田首相が中国を訪問した際、陳水扁当局の「国連加盟の住民投票」を支持しない意思を表明し、中日関係の障害を一掃するために非常に重要な1歩を踏み出した。日本側は台湾問題においてさらに積極的な立場をとり、あいまいな姿勢を変え、中日関係の発展に秘められている懸念を取り除き、問題の解決を通じて中日関係のレベルを昇格させるべきである。
中日関係という大きな船は航行の過程において必然的に激流と渦巻きに出会うこともあろう。中日という2つの共同の操舵者がもし心を合わせて協力し、共に激流と渦巻きに対応することができるならば、この大きな船は航行の方向からそれることなく波を切って前進することができ、必ず中日両国の国民に幸せをもたらすことになり、これは中日両国の共通の歴史的責務である。胡錦涛主席の訪日はほかでもなくこの目的のためのものである。
「チャイナネット」2008年5月9日