ハイチ大地震の発生に、米国政府は迅速な対応を見せた。オバマ大統領は演説を数回行い、一連の救援措置を打ち出した。クリントン国務長官はパプアニューギニア、ニュージーランド、オーストラリア歴訪を中断して16日にハイチを訪れ、4時間滞在。「米国は今日も、明日も、今後もハイチに留まる」と表明した。
地震発生後の米国の行動は、カリブ海、さらには中南米全体での米国の外交戦略に影響を及ぼすことになる。ハイチの西には米国と長年対立するキューバが、南には米国の向こうを張るベネズエラがある。米国本土とわずか1120キロの距離にあるハイチは、米国の「裏庭」の門戸と見なされているのだ。オバマ政権発足以来、米国は中南米諸国との関係改善に努めてきた。だが、コロンビアとの軍事協力による負の影響やアフガン戦争が妨げとなり、その中南米「接触」政策ははかばかしい成果を上げていない。ハイチ大地震を機に目立った救援活動を行うことで、米国はそのイメージ改善においてポイントを稼ぐとともに、自らの「裏庭」の門戸にどっしりと腰を据え、さらにこれを支点として、引き続き南に影響力を及ぼすことができるのだ。
これは米国の国内政局にも微妙に影響を及ぼす。ブッシュ前大統領はハリケーン「カトリーナ」の際、救援の取り組みが不十分だったことで、政治的評価を下げた。オバマ氏は大統領選の際、これを前政権のアキレス腱と見なして批判の的にした。この点を考慮し、オバマ大統領はハイチ大地震への対応において、ことのほか努力をアピールしている。米国では今年、中間選挙が行われる。米国政府は当然この政治的風向計を重視している。ハイチでの救援活動でポイントを稼げば、中間選挙で民主党への追い風となる。
だが、ハイチ大地震後の米国の行動には、批判や懸念の声も上がっている。「外交がすでに手一杯の時に、全力でハイチを救援するのは、多少行き過ぎだ」との批判。さらに多く聞かれるのは、米国の行為が自業自得の「ブーメラン効果」をもたらすことへの懸念だ。多くの人は、米国とハイチとの関係について不愉快な記憶を持っている。歴史的に、米国の対ハイチ政策は常に両極端だった。ハイチの内政に過剰に干渉するか、あるいは長期間無視するかのどちらかだったのだ。今回の地震発生後、米国は海軍、陸軍、空軍を一斉に出動した上、少しのためらいもなくポルトープランス空港を一国でコントロール下に置いた。このため、米国がこれを機にハイチを「接収管理」しているとの不平や非難が絶えず聞かれる。
米国政府はこれに対して非常に敏感で、「全ての救援活動はハイチ政府の要請によるもので、その認可を得た上で行っている」と繰り返し説明している。注意深く観察していく必要があるのは、ハイチ地震が焦点でなくなった時、米国がハイチの復興においてその役割や影響をどのように発揮するかだ。「ハイチ地震はオバマ政権に、新たな方法で事を進めるためのチャンスを提供した。鍵となるのは、微妙な正負の『米国効果』の間でどのようにバランスを保つかだ」との分析もある。
「人民網日本語版」2010年1月21日 |