米国防総省が先日、2010年度「中国に関わる軍事・安全保障の発展報告」を発表した問題について、上海国防戦略研究所の趙楚副所長と軍事科学院世界軍事研究部の趙小卓研究員に話を聞いた。「新京報」が伝えた。
記者:今年米国の発表した「中国に関わる軍事・安全保障の発展報告」は、過去数年と比べ、内容面でどのような変化があるか?
趙楚:内容から見ると、以前と基本的に同じだ。いずれも中国の軍事的透明性、台湾海峡の軍事力、海上軍事などについて記している。表現の上では、中国の空母建造の問題を重点的に取り上げ、内容も例年より一層細かくなっている。
趙小卓:大体の内容は基本的に同じだ。今回の報告書はわが軍の反介入戦略についてさらにページを割いている。これは米国が最も懸念している問題だ。米国の対外軍事戦略構想は、世界のいかなる場所にも軍事力を及ぼすことができるようにすることだからだ。その他に、サイバー攻撃能力についても比較的多く言及している。中国のサイバー攻撃能力への米側の心配をよく示すものだ。
記者:発表時期が例年よりいくらか遅くなったのはなぜか?
趙楚:そう。過去5年間を見ると、6月前後に発表されるのが普通だった。だが今年6月には胡錦濤主席とオバマ大統領の会談があったので、米側はさまざまな考慮に基づき、発表を遅らせた。この時期を選んだのは、中米の正常な軍事交流が大きな打撃を受けること、中国の譲れぬ一線に触れることを実際にも望んでいないからだ。米国は現在、韓国やベトナムと軍事演習を行ってはいるが、中米関係の大局に影響が出ることは依然望んでいない。
趙小卓:米国が中国の軍事力に関する報告書を発表し始めたのは1999年だ。当時は主に台湾海峡の軍事力について記し、他の事には触れていなかった。2000年に米議会は、国防総省に中国の軍事力に関する年次報告書の発表を義務づける法案を可決した。現在までこの報告書はたった1年を除き、毎年発表されている。当初は3月、5月前後に発表されていたが、ここ数年は6月だった。今年の発表が遅れたのは、中米外交上の必要からだ。
記者:報告で米国は再び台湾海峡の軍事力を比較している。
趙小卓:米側の報告書は毎年、台湾海峡の軍事力に言及している。米国人は大陸と台湾の軍事的均衡を望んでいる。米国が報告を発表するのは、実際面では台湾に武器を輸出する地ならしのためでもある。だが、報告が中国軍事脅威論を広め、中国と周辺国との関係に非常に良くない影響をもたらしていることは否定できない。
報告は実際は米国防総省の文書作成チームがまとめている。私はこのチームと接触したが、彼らも中国の軍事力に対してより多くが推測であり、完全に客観的なものではないことを認めた。通常、このチームが書き終えると、シンクタンクで修正を行い、その後米国家安全保障委員会と国務省も目を通す。最終的にできあがる報告書は米国の国益に合致するものでなければならない。
「人民網日本語版」2010年8月19日