韓米の定例合同軍事演習「 乙支 ( ウルチ ) フリーダム・ガーディアン」が16日に始まった。最近の一連の合同軍事演習の重要な一部で、米軍の参加人数は以前の3倍だ。米国防総省はこれに先立ち、黄海での軍事演習への空母ジョージ・ワシントンの派遣も発表した。(文:袁鵬・中国現代国際関係研究院美国所所長、「人民日報海外版」のコラム「望海楼」より)
表面的には、米国の動きは「天安」事件に対するある種強硬なリアクションだ。最近の南中国海問題における姿勢と結びつけると、次第にアップグレードするその行動はすでに「リアクション」としての性格を超え、実力誇示の戦略的意図を備えるにいたっている。
米国から見ると、アジア太平洋地域での主導的地位や西太平洋地域での海上覇権は近年明らかに衰え、同盟国の日韓は離反傾向を強め、朝鮮は後戻りのできない核保有の道を歩んでいる。「ASEANプラス1」「ASEANプラス3」の協力体制が強化され、中国・ASEAN自由貿易圏が構築され、中日韓自由貿易圏も着実に進んでいる。地域の一体化に米国はかつてない疎外感を覚え、戦略的緊迫感をも抱くにいたっている。米国が特に懸念しているのは、中国が強い勢いで発展し、アジア太平洋地域への影響力を急速に高めていることから、アジア太平洋から自国がひっそりと押し出される可能性があることだ。
こうした懸念と憶測に基づき、米国は「天安」事件に飛びついて大騒ぎし、合同軍事演習などを利用して北東アジア情勢に影響を与えようと企んでいる。米国はASEAN地域フォーラムや一部ASEAN諸国のデリケートな心情を利用して、いわゆる「脅威」と自国のパワーを宣伝している。憶測から出た戦略的好機と効果に米国は得意になり、空母ジョージ・ワシントンを黄海や南中国海に自由に出入りさせることで「アジア太平洋と海洋は今も米海軍のコントロール下にある」とことさらに宣告しているかのようだ。
米国のこうした動きには危機へのリアクションとしての側面もあるが、それにも増して「アジア太平洋に影響を与える」ための行動と言えよう。
第1に、黄海や南中国海での米国の強硬姿勢が明らかにするものは、以前のような泰然自若たる自信や余裕ではなく、上陸拠点固守の戦略的敏感性と心理的焦りであり、大きな経済的ダメージを受ける中で軍事力を崇拝する米国の特殊なメンタリティーを露呈している。
第2に、現在までのところ、米政府の基調は依然として積極的・協力的・包括的な米中関係の堅持・発展であり、「国家安全戦略報告」「4年ごとの国防評価報告」などの政府報告から見ても、その対中戦略に根本的な動揺はない。
第3に、黄海や南中国海において米国の示す軍事的「ハードパワー」と同時に、強い経済的・文化的結びつきによるアジア太平洋における中国の「ソフトパワー」にも目を向ける必要がある。中国の平和発展は、経済や文化の深いレベルでの融合を通じて周辺国との共栄を実現するもので、この戦略は周辺国から歓迎されている。
第4に、南中国海での米国の動きは気勢激しく、関係国との軍事的関係が強化されたように見える。だが米国の強力な介入を、ASEAN各国は歓迎すると同時に、深く懸念してもいる。中国は「善隣」「近隣関係の安定」「近隣国の経済成長促進」政策を揺るがず遂行しており、完全な中国包囲網を築くことは誰にもできない。
中米関係の発展に摩擦、衝突、競争、闘争はつきものだ。自国の安全保障上の利益を断固守ると同時に、沈着冷静に対応して、戦略的判断の誤りによって大局を乱すことのないようにしなけれならない。
「人民網日本語版」2010年8月19日