文=中国現代国際関係研究院日本所副所長 馬俊威
広まる国際政治の多極化や世界経済のグローバル化の中で、中日両国は同時にその転換期を迎えているようで、国際社会における地位や役割に大きな変化が見られる。中日両国間の共同利益を礎に打ち立てた戦略的互恵関係には、両国がこの時代に合った思考を以って解決しなければならない多くの問題が存在している。
まず、中日関係の発展に影響を与える客観的要素を正確に認識、対応すること
現在、日本では「中国脅威論」、中国国内では「日本軍事大国論」が、取り沙汰されており、これらの問題は両国の国民感情に直接影響を与える。しかし、そのほとんどの部分が、相手国への理解不足とメディアの偏った報道がもたらしたものである。
「中国脅威論」は、たいてい中国の発展段階における未確定要素にばかり着目したものであり、中国の客観的な展望ではない。また、日本の「海外派兵」を軍事大国への一歩だとする中国国内の報道も、日本が日米同盟を守ろうとしている受身的側面には気付いていない。そのため、両国の政府、民間、メディア間の意思疎通や交流を強化し、戦略的観点から正確に相手国の発展状況を認識することが非常に重要になってきている。
次に、中日経済協力関係を発展させ、両国の絆を深めること
現在、中日両国は全ての経済分野において協力と相互依存の関係を構築している。経済の相互依存レベルから言えば、中日関係はすでに日米関係を超えている。中国政府が2008年末に行った、4万億元の公的資金投入という強力な経済刺激策の下、日本企業の中国に対する原材料、部品、生産設備、建築機械、輸送機械等の生産関連製品の輸出は急激に拡大した。特に、自動車産業の中国への移転はその勢いが止まらず、観光業や航空業においても中国人旅行客による利益率が急速に拡大している。また、省エネ・エコ産業における最大の市場は中国であり、中国市場はすでに、日本経済の生命線となっている。
中日両国は、エネルギー資源や環境問題等の分野や自由貿易区建設等の方面で、まだまだ巨大な協力空間を有している。今後の二国間経済貿易関係の更なる発展は、アジア経済の活発化や国民感情の改善、政治的信頼関係に重大な影響をもたらすこととなる。
第三に、危機管理システムを構築し、中日安全信頼関係を強化すること
2007年以降では、中日軍事交流が中日戦略互恵関係の一部として進展を遂げている。中国の曹剛川国防部長、許其亮空軍司令員、呉勝利海軍司令員等が相次いで日本を訪問し、日本側も浜田靖一防衛大臣、斎藤隆自衛隊幕僚長等が前後して訪中、更に軍艦相互訪問を実現した。
しかし、中米、日米の軍事交流に比べると、中日間の軍事交流はまだ初歩的段階に止まっており、まだ安全保障や信頼関係の増進につながる顕著な効果は見られない。2010年に起こった「天安号事件」や「中日船舶衝突事件」、「朝韓砲撃事件」、更には米韓軍事演習や日米軍事演習は、東北アジア情勢の緊張を高めた。これらに対する対処の中でも、中日間の安全保障分野における信頼関係の欠如や意思疎通の不足等のウィークポイントが露呈することとなった。
よって、偶発的事件による中日関係の大局への影響を防ぐため、両国間で危機管理システムを構築し、二国間や多国間での安全保障対話の強化を図ることを勧めたい。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年1月18日