写真はボイス・オブ・アメリカのスタジオ
一時代の終結
ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の上層機関である米放送管理委員会(BBG)は16日、国会に2012年度の予算案を提出した。この予算案が国会で承認されれば、今年10月1日より、中国語と広東語のラジオ放送とテレビ放送は廃止されることになる。中国語のウェブサイトは残されるが、中国語部門は大幅に縮小される見通しだ。
米国営の海外向け放送、ボイス・オブ・アメリカは1942年の開始以降、第二次世界大戦、ソ連崩壊などのニュースを伝えてきた。VOAの中国語部門は中国にアメリカの価値観を伝える「アメリカ政府の舌」の役割を背負い、米国政府に重視されてきた。メディアは今回の廃止について「中国向けラジオ放送時代の終結」と報じた。
VOAによる今回の決定は各方面から様々な憶測を呼んでいる。放送管理委員会のエンダース・ウィンブッシュ氏は「VOAは中国向けラジオ放送を廃止したのではなく、他のラジオ局に移管しただけだ。また、放送の効果を高めるため、VOAは放送媒体をラジオからインターネットに移行している」と明らかにした。
放送媒体の移行
VOAはなぜ中国向け放送を廃止したのか?主な原因は技術の変遷だろう。インターネットの時代に、ラジオ放送というのは確かに時代遅れだ。VOAの中国語部門も「中国人はほとんど(ラジオ放送を)聴いていない」と明らかにしている。また、予算的に見ても、アメリカの財政赤字は過去最悪となっており、「時代遅れ」の中国向けラジオ放送が廃止されるのは当然だといえる。
アナリストは「中国語のウェブサイトが残されることに注目すべきだ」と指摘する。これはアメリカが新たな戦略に踏み出すことを意味しているという。ヒラリー米国務長官はこれまでに何度も「インターネットは海外での宣伝活動を支える重要なコンテンツであり、アメリカは今後、インターネットの主導権獲得を目指していく」と強調している。また、インターネットの影響力の大きさは、ここ最近の中東の混乱をみても明らかだ。したがって、中国向けラジオ放送が廃止されたことに驚く必要はない。
米政府による中国への接近
今回の廃止計画に対しては賛否両論の意見が出されている。ある議員は「アメリカが中国におびえた証拠だ」と批判した。
しかし、アナリストは「これらの懸念はすべて杞憂となる」との見方を示した。アナリストによると、VOAは冷戦時代の「歴史的産物」だという。現在、中国とアメリカはウィン・ウィンのパートナーシップ関係を結び、互いに尊重し合う関係にある。冷戦時代の敵対関係では決してない。とりわけ、金融危機の下では、協力し合うことが更に重要だ。したがって、今回の中国向け放送廃止は「時代の流れ」に合わせた決定であると考えられる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年2月22日