米政府は先日、新たな対テロ国家戦略を発表した。アルカイダ系組織を引き続き最大の脅威と位置づけているほか、米本土を初めて最重要の対テロ区域に指定。特にアルカイダから思想的影響を受けた本土在住のテロリストに備える必要性を指摘している。ブレナン米大統領補佐官は「将来のテロとの戦いにおいて、最良の攻撃は常に国外に大規模な軍隊を展開することではなく、テロ組織に対してピンポイントの、外科手術的行動をとることだ」と表明した。
新戦略は本土テロへの備えを特に強調しているが、これは少なくとも2点を考慮した結果だ。第1に、米国の直面するテロの脅威はビンラディン射殺によって減少したわけではない。分散化したアルカイダネットワークによって、対テロ目標の判別は一層困難になっている。また、アルカイダはアフガニスタンやパキスタンで圧力を受けることで、米国内での攻撃に一層傾いている。第2に、来年は米大統領選であり、再選を狙うオバマ大統領はまず国民の安全を確保しなければならない。さもなくばビンラディン射殺の戦果も烏有に帰してしまう。
ブッシュ政権が2006年に発表した対テロ国家戦略と比較すると、オバマ政権の新戦略には明らかに縮小傾向が認められる。オバマ大統領は就任後、ブッシュ政権の「グローバル対テロ戦争」をアフガニスタンとパキスタンに集中。また、アフガニスタンからの撤退の進行に伴い、米国の関心は本土テロの脅威へさらに軸足を移している。もちろん新戦略の描く対テロの範囲も広範で、米本土から南アジア、アラビア半島、東アフリカ、東南アジア、中央アジアなどを含み、依然「グローバル対テロ」の様相を呈している。だがオバマ政権は大規模な軍事作戦を避け、特殊部隊と情報機関の協力、無人機など高精度・低コストの対テロを重視する考えを強調している。こうした縮小は1つには理念の相違、もう1つには国内経済・財政の巨大な圧力に由来するものだ。