2002年締結の「南中国海問題における各国の行動宣言」が良い文書であるのは、まず南中国海問題の解決には平和的、友好的で調和のとれた環境が必要であり、溝や係争の解決にプラスとなる条件を整える必要があることを、中国とASEAN加盟国が強く意識したことによる。各国はこの文書の中で、対等と相互尊重を基礎に信頼構築の道筋を模索することをはっきりと約束した。それから10年近く、中国は「南中国海問題における各国の行動宣言」、およびそれに続く行動プロセスの実行を積極的に推し進め、できるだけ早く具体的進展が得られるよう極力務めてきた。遺憾なのは、ごく一部の国がこれに協力してこなかったことである。
バリ島での会議の前に、ASEANのごく一部の国は「拘束力ある行動規範」を打ち出すべく力の限りを尽くし、さらには「米国や日本と協力する中で問題を解決したい」とメディア にもらしさえした。この提案の本旨についての論評は取りあえず控えるが、現在の南中国海問題の雰囲気の下で、このような「強力推進姿勢」に現実的基盤はあるのだろうか?南中国海問題を国際化することで中国に圧力を加えようとするごく一部の国の企てと結びつけると、「いわゆる『拘束力ある』『行為規範』の真意はどこにあるのか?」との疑問をわれわれが抱くのも当然だ。中国を束縛する一方で、自らの手足は解き放つのではないのか?未熟な「行為規範」は「拘束力」を持ち得ず、逆に情勢をより複雑化させるのではないのか?
現在のASEANが政治、経済、外交など多方面で一層の内部統合を必要としているのは確かだ。しかし、南中国海問題の国際化に乗じて内部統合を強化し、国際的影響力を高めようと望むのは、明らかに非現実的だ。そうすれば少なくともASEAN加盟国間の関係に影響が出るし、深刻な場合は「地域の全ての国々の利益を損なう」ことになる。
南中国海紛争は中国とASEANの根本的利益に合致しない。地域の未来の共同発展・繁栄の視点から南中国海問題を考えれば、平和的協議による共同解決の意義がより明確に理解できるはずだ。現在必要なのは、南中国海紛争の沈静化を図り、中国・ASEAN関係の発展を全面的に促して、南中国海問題の最終的解決に望ましい環境を醸成することだ。
中国と周辺国には南中国海問題を適切に処理する知恵と能力があると、われわれは信じている。
「人民網日本語版」2011年7月20日