米政府が1年余り強調してきた「アジア回帰」戦略は、5日発表の新軍事戦略によって、ついにその矛先を明らかにした。アジア太平洋地域の各メディアはいずれも新軍事戦略について(1)アジア太平洋地域が重点(2)軍事費の一層の削減----を注目点として挙げている。一部学者の関心は後者とその引き起こしうる問題に集中している。タイ・チャラロンコーン大学政治学部のThitinan Pongsudhirak教授は8日、人民日報の取材に「新軍事戦略には超大国の地位を維持すると同時に、財政危機対策としてコストを削減する狙いがある」と指摘した。オーストラリアの駐米大使は「米国の軍事的重心のアジア太平洋へのシフトが、中国または豪中の相互貿易関係への脅威となることはない」と表明した。
■新たな不安定要素をもたらすおそれ
新軍事戦略の発表に、アジア太平洋各国はただちに反応を示した。新軍事戦略がアジア太平洋地域の安全強化に寄与するとして歓迎する国が少数ある一方で、アジア太平洋地域に新たな不安定要素をもたらすおそれを指摘する専門家も少なくない。ジョナサン・マスターズ氏は米外交問題評議会ウェブサイトへの寄稿で、アジアへの戦略シフトによって、元々余り安定していない同地域の軍事化が一層進行する可能性を指摘した。
共同通信(6日付)によると、日本の一川保夫防衛相は6日、新戦略に歓迎の意を表明。米国の国防費削減については、日本の安全保障への影響はないとの認識を示した。
韓国メディアは一定の慎重姿勢を見せている。朝鮮日報は(6日付)、林官彬・韓国国防省政策室長が6日の記者会見で「在韓米軍の戦闘力への影響はない。韓半島防衛の約束にもなんら変更はない」と述べたことを報道。一方で、米国の国防費の大幅な削減、陸軍と海兵隊の兵力削減、大規模な地上戦の回避によって、韓国は必然的に有形無形の負担を背負うことになるとも指摘した。
タイムズ・オブ・インディア(6日付)は「インドとの戦略的パートナーシップの構築に尽力」との文言を特に強調し、新軍事戦略がアジア重視を強めたものであることを指摘した。
アジア太平洋における米国のもう1つの同盟国、オーストラリアの姿勢はやや意外なものだった。同国のキム・ビーズリー駐米大使(元国防相)は米ABCのインタビューに「米国の軍事的重心のアジア太平洋地域へのシフトが中国または豪中の貿易関係への脅威となることはない」と強調。「米国の新軍事戦略は封じ込め戦略ではない」と述べた。