「中国の話題」は米国の大統領選劇に欠かせぬ一幕だ。各候補者は代わる代わる出てきては強硬発言をする。輪をかけて勇ましい姿勢を見せ、常識外れのでたらめを言う者すらいる。
強硬姿勢の背後にはイデオロギー色に満ちた思考がある。「自由と公正に対する見解において、米中両国は価値観を共有していない。中国は影響が計り知れず、かつ人々を憂慮させるスタンダードを代表している。米国は対中強硬姿勢を通じてこのスタンダードに挑戦しなければならない。中国の台頭と米国の長期的な安全および経済的安定は併存しえない」というものだ。
米国の中国問題専門家には「中国は都合の良いサンドバッグだ。候補者はついこのサンドバッグを叩くが、いったんホワイトハウスの主となり、中国との利害関係に気がつくと、選挙戦時の発言を投げ捨てる」との明言がある。
だが事はそう簡単ではない。中米国交樹立以降の歴史を振り返れば、米大統領選が中米関係に与える打撃、さらには傷に対して警戒心を保つだけの理由があることに気づく。選挙戦時の「約束」は精神的プレッシャーでもあり、ホワイトハウスの新たな主は意識的または無意識に「約束」履行のために何らかの行動をとる。
典型的な例を2つ挙げる。1992年の大統領選では、冷戦後の中米関係の重要性に対する認識が明確化でなかったため、クリントン候補はブッシュ大統領(当時)を「中国を甘やかしている」と批判。当選したら「中国を封じ込める」との脅し文句まで口にした。2000年の大統領選では、ネオコンが外交政策を主導し、ジョージ・W・ブッシュ候補は中国を戦略的パートナーではなく戦略的競争相手と位置づけ、「台湾の共同防衛」まで打ち出した。クリントン候補とジョージ・W・ブッシュ候補がホワイトハウス入りした後、中米関係は厳しい試練を経験した。