インド国防研究開発機構(DRDO)はこのほど、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「アグニ5」(射程5000キロ以上)の発射実験を18-20日に行うと発表した。実験が成功すれば、インドは大陸間弾道ミサイル(ICBM)保有国への仲間入りを果たすことになる。特に注目されているのは、アグニ5が中国全土のみならず、アジアの全てと欧州の半分を射程に収めるミサイルであることだ。軍事科学院の杜文龍研究員は人民網の取材に対し「インドの核政策はずっと曖昧だ。アグニ型ミサイル最大のアグニ5の発射実験成功は、どの国にとっても脅威だし、近隣国の中国にとっては特に大きな脅威となる」と指摘した。
■インドの核攻撃戦略の「切り札」
アグニ5の発射実験に成功すればインドは一躍、ICBM技術を保有するわずか数カ国の1つとなる。射程距離では国連の5つの常任理事国に続く世界第6位、アジアでは中国に迫る2位となる。
杜氏は「インドにとってアグニ5は地域大国から世界大国への転換を果たすうえで力強い支えであり、軍事大国への道における重要な支柱でもある。インドの戦略抑止力と核攻撃能力全体の強化に大きな役割を果たす。インドの核攻撃戦略全体において、アグニ5は最大の攻撃力を持つ」と指摘した。
■国際社会の脅威
アグニ5は中国全土のみならず、アジアの全てと欧州の半分、そしてインド洋の大半を射程に収める。インドの弾道ミサイルがこれほど長距離の攻撃能力を手にするのは初めてだ。アグニ5についてDRDOは「ICBM」ではなく「中距離ミサイル」だと表現を変え、射程も5000キロだと対外的に主張しているが、8000キロまで到達する可能性が高いと諸外国は見ている。杜氏は「5000キロというのは『政治的射程』に過ぎず、『技術的射程』ではない。米国を始めとする国際社会の懸念や疑念を和らげるための政治的策略だ」と指摘した。
杜氏は「インドの今回のミサイル技術の向上は、米国の欧州の同盟国やアジアの軍事基地まで脅かすものであり、米国の戦略的優位に対する挑戦であると同時に、米国の軍事戦略の東へのシフトを抑え込むものでもある。すでに米側はこの動きを注視し、隠そうとすればするほど露呈する意図に、軍事的な不透明性を非難するようになっている」と指摘。「米国の戦略的利益と正面衝突した場合、次の封鎖の対象となり、得るものより失うものが大きい結果となる可能性が高い。アグニ5発射実験の成功は、インドと米国の軍事協力関係が冷え込むきっかけとなるだろう」と述べた。
杜氏はまた「アグニ3、アグニ4以降、インドは中国の主要地域を攻撃範囲に収めた。中国は一貫して積極防御という核戦略を明確にしている。一方インドは核兵器の不使用を約束しておらず、その核戦略は一貫して曖昧性が強い。こうした状況下でICBMの開発を進める。その用途と標的は一体何なのか?これはどの国にとっても脅威だし、近隣国の中国にとっては特に大きな脅威となる」と指摘した。
「人民網日本語版」2012年4月19日