アジア太平洋戦略、特に中米関係に関する最近の米高官の発言は、いくらか穏やかになったように感じられる。アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)でパネッタ米国防長官は「アジア太平洋のリバランス」戦略について、中国の台頭を抑え込むためのものであることを明確に否定した。AP通信は「パネッタ長官は『共産主義の巨人』に和解の申し出をするとともに、『頻繁に言い争っている両大国はより良くつきあうことを学び、さらに地域全体に幸福をもたらすべきだ』とのメッセージを伝えているようだ」と指摘した。
ここ数年、米政府高官が中米関係について肯定的、積極的な発言をすることは珍しくない。米軍当局も対中戦略について激しい口調を止めることを学びつつある。だが中国には古くから「言葉を聞くだけでなく、それ以上に行動を見なければならない」という言葉がある。
「アジア太平洋のリバランス」戦略はアジア太平洋回帰のさらなる拡充と見られている。米国はアジア太平洋地域で強大な軍事的プレゼンスを維持しており、リバランスはアジア太平洋地域に対する戦略設定であり、アジア太平洋地域の将来の安全と安定にも関わってくる。米国は一体何のリバランスを求めているのか?こうしたリバランスによってアジア太平洋地域はさらに平和になるのか、それとも不安定化するのか。西側の一部学者は米国の軍事面のリバランス戦略は地域の衝突の増加を招くと断言する。AP通信はパネッタ長官のアジア訪問には「大部分で中国が領有を主張する海域における同盟国やパートナー国による海洋権利の発展、行使」に助力する方針を改めて表明するとともに、高まり続ける中国の影響力にパートナーシップの助けを借りて対抗したい考えを明らかにする意図があると指摘する。だが米国の行動を受けて、中国が軍事面で相応の「接近阻止」戦略を講じることは必至だ。
本質的に言って、リバランスは新たなコンセプトでも何でもない。相変わらず、中国の発展に対するごく一部の周辺国の懸念を利用して米国の戦略的地位を補強しようとするものだ。米国はいわゆる安全保障上の義務を口実に中国への締め付けを強化すると同時に、中国との衝突や対立を回避しようともしている。この矛盾に満ちた戦略によってアジア太平洋の安全保障構造が複雑性を増すことは間違いなく、分裂をもたらす可能性すらある。