「アジア太平洋回帰」の大きな旗を高々と掲げて東南アジアに挺進する米国は、この地域に非常に複雑な心理的変化を引き起こしている。本紙(人民日報)記者は東南アジアの学者や高官への取材で、その多くが米国の「アジア太平洋回帰」への受け止め方において、非常に慎重であることをはっきりと感じた。東南アジアにおいてこれは熱く議論されると同時に、敏感な問題でもある。
東南アジアの識者の敏感な心理は、多くの人がこの問題について考えるとすぐに「われわれは米国の大きな旗について行かなければならないのか?」「米国の行動はわれわれの主要パートナーである中国を念頭に置いたものなのか?」「東南アジア諸国は中米のどちらにつくかを選ばなければならないのか?」との疑問にぶつかることを物語っている。
東南アジアの専門家の発言を借りるなら、中米両大国の利益はこの地域でどんどん重なり合ってきている。だが利益の重なり合いは必ず衝突を招くものでは決して無く、融合へと変えることもできる。もし中米の「接近的駆引き」がこの地域で始まると言うのなら、こうした「駆引き」を両国が新しいタイプの大国間関係を確立するための試みへと転化することがなぜできないのか。
この重大かつ歴史的意義に富む試みがどこまでいけるかは、両国の自らの位置づけ次第だ。つまりどのような役割で東南アジアの舞台に上がり、どのような立場で東南アジアの発展プロセスに参画するかだ。
東南アジアは中国と米国の到来を歓迎するが、覇権は歓迎しないし、ましてや必要としていない。東南アジアが歓迎するのは、両経済大国が重要な経済的エンジンとしての役割を引き続き発揮することだ。東南アジアは中米が協力を深化し、地域の平和と安定をさらにしっかりと支えることを必要としている。