春節(旧正月、今年は2月10日)前に英国のある大手定期刊行物は「現在の中国社会では腐敗がはびこり、生存環境が深刻に破壊され、人々は様々な『奴隷』に成り果てている」との中国人読者の投書を掲載し、「中国にとって至上の国益とは南中国海と釣魚島(日本名・尖閣諸島)ではない。この国の根本は領土ではなく、人と制度だからだ。人々のモラルと制度の問題はたとえ他国から領土を送られても保証できない」との結論を導き出した。(文:戴旭・中華エネルギー基金委員会戦略アナリスト。環球時報掲載)
こうした荒唐無稽な論調は中国のインターネット上で一定の支持層を持つ。類似した論調には「われわれはどうして空母保有にお金を使わなければならないのか」などもある。その支持者の中には著名人も少なくなく、現実に不満を抱く一部の庶民をすこぶる惑わせてもいる。結局のところ、こうした論点を持つ者は中国の核心的利益に対する外部の挑戦を中国内部の問題へシフトさせようとしているのに他ならない。あるいは民生上の不足点の全てについて、国防にお金を使うせいだとして政府に罪をなすりつけようとしているのだ。
どの国も数えきれないほど内部問題を抱えるが、それを理由に安全保障上の注意を緩める国はない。理由は簡単だ。鳥の巣が落ちれば中の卵も全部割れてしまうからだ。安全保障は国家の存続と発展の前提条件だ。そして安全保障の基礎であり根本であるのが領土なのだ。
安全保障という前提がなければ、経済発展など全く語りようがない。清朝末期の中国は安全保障問題を解決しないまま洋務運動を展開した。こうした「改革開放」による経済的成果は最終的に日本の獲物、列強の戦利品となった。翻って新中国を見ると、まさに驚天動地の抗米援朝(朝鮮戦争)の勝利によって安全保障環境を徹底的に転換した上で現代化の序幕を開き、また原水爆と弾道ミサイルで強敵を抑止する能力によって、国家の発展の保障を勝ち取ったのである。