日本の現行の選挙制度には大きな問題が存在するため、昨年12月の衆議院選挙で安倍晋三氏率いる自民党は小選挙区で得票率はわずか43.01%だったにも関わらず、79%の議席を獲得した。つまり300議席中237議席だ。安倍氏は喜びに我を忘れ、憲法改正に本腰を入れる方針を表明した。だが自民党内部でもこうした姿勢に批判の声が上がったため、安倍氏は「アベノミクス」と呼ばれる経済政策により力を注ぎ、政治分野の発言は比較的抑えた。(文:伊藤成彦・中央大学名誉教授)
だが4月になって靖国神社の春季例大祭が始まると、超党派議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」が行動を開始。まず麻生太郎副総理ら閣僚が21日に靖国神社を参拝し、23日には1987年以来最多となる168人の国会議員が集団参拝した。
こうした異常事態は、日本とアジア諸国との関係に影響を及ぼした。中国外交部(外務省)報道官は「過去の侵略の歴史を直視し、深く反省してのみ、日本は未来を切り開くことができる」と指摘。麻生氏の靖国参拝後、韓国は尹炳世外相の訪日計画を中止した。韓国外交筋は、日韓首脳会談は今年秋前は実現困難だろうと表明した。
中韓の批判を前にしても、安倍氏は国会で「脅しには屈しない。英霊に尊崇の念を表する自由を保障するのは当たり前のことだ」と表明。さらに「歴史や伝統に立った国家の誇りを守るのも私の仕事だ。それを放棄すれば外交関係が改善するとの考え方は間違っている」と述べた。