<改革開放で深化される分野とその中身>
さて、18期3中全会で深化の審議対象とされている主分野は、財政、金融、行政、戸籍、土地、資源関連に集約できます。まず、報道や有識者の見解をもとに、その要点を紹介しておきましょう。
財政改革:地方政府負担の社会保障、義務教育、一部医療費の中央政府支出への切換。地
方政府による債券(地方債)発行の認可、税制改革(営改増、不動産税等)など
金融改革:利率の自由化、人民元国際化、中国(上海)上海自由貿易試験区の設立(人民
元の資本項目での開放〈試行〉など)
行政改革:規制緩和の拡大(各種手続きの簡素化・一本化等)、行政の透明度向上(三公消
費〈公費による外遊、公務接待、公用車の購入・使用〉の規制強化、公務員給与・財産の公開)、腐敗取締り強化など
戸籍改革:中小都市戸籍の全面的開放(農民の市民化)など
農村土地改革:農村土地交易の市場化など
資源関連改革:公共料金(水道、ガス、電気、地下鉄・鉄道など)の調整・市場化、資源
関連事業における競争原理の導入など
このほかにも、国有企業改革(民営企業の育成・発展)、一人っ子政策の見直し(将来的少子高齢化に向けた対応)なども深化すべき課題でしょう。そのいずれの改革深化もいくつかの領域にまたがり、かつ、即実践、試行後実践される改革と、一様とは限りません。
筆者は、こうした改革開放の深化の実践・試行の成果をみる現場は、目下急速に進む中国経済の民営化と国際化、そして、都市化にあるとみています。例えば、都市化を例にとると、これまでにない大胆な戸籍制度改革で農村から都市(中文:城鎮)への移動の自由、各階層間および地域間の格差是正、社会保障の充実化が求められ一方、都市人口の増加は内需拡大をもたらし、目下、中国が標榜している内需主導の成長パターンへの転換に貢献すると期待できるでしょう。国際化では、最近設立され、18期3中全会でも議題になっているとされる「中国(上海)自由貿易試験区(後述参照)」の行方が注目されます。
<月餅からみた改革開放深化の側面>