ワーク米国防副長官は米外国問題評議会で、中国とロシアについての質問に「中露は現行の世界秩序のいくつかの面を変えようと考えている。米国はこれにいかに対処するかを戦略レベルで考え、必要時には同盟国の受けた攻撃に対して軍事的対応を取ることを含め、常に両面の準備をしておく必要がある」と主張した。(文:華益文・国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
表面的には、中露に関するワーク氏のこの発言は慎重に言葉を選んだものと言え、余りに常軌を逸した部分はない。だが上下の発言および米政府側のこのところの中露に関する姿勢表明と結びつけて考えると、行間に滲む中露に対する疑念や懸念、さらには敵意までもが見てとれる。いわゆる「中露は現行の世界秩序を変えようとしている」について、米側は近頃多々言及している。その口実は中国と隣国との領土・海洋権益争い、ウクライナ危機、ロシアと西側の関係など多種多様だ。
世界秩序の問題は世界の平和、安定、繁栄に関わり、当然大きな問題だ。世界秩序は一度構築されれば永久に変わらないものでは決してない。戦後国際秩序にも合理的でない部分、公正でない部分が少なからずある。米国は戦後世界秩序の主要構築国の1つであり、主要受益国の1つでもある。米国が維持しようとする世界秩序と、中国を含む多くの国々が望む世界秩序は完全に一致するわけではないが、中国は現行秩序の転覆は主張せず、改革を主張している。それでも米国は中国を現行秩序に対する潜在的な最大の挑戦者と見なしている。その根本的原因は中米の政治・社会制度に根本的違いがあること以外に、米国が中国の総合的実力のたゆまぬ増大を米国に対する潜在的脅威の増大と同一視しているからだ。ロシアはソ連崩壊後に民主化と親西側路線を実行したものの、西側陣営から友好的扱いを受けることはなく、ウクライナ危機発生後は、また西側から制裁を受け、孤立し続けている。ロシアの戦略空間は米国を始めとする西側諸国に圧迫され続け、これに対するロシアの報復は西側から脅威、挑戦と見なされている。
キッシンジャー氏は新著『世界秩序』で、西側が構築し、宣伝してきた世界秩序は現在転換点にあると記した。一方、西側の一部の学者やメディアは、世界秩序は崩壊しつつあると考えている。転換であれ崩壊であれ、こうした判断の主な根拠は次の3点に他ならない。(1)オルブライト元米国務長官が少し前に米CBSのインタビューで述べたように「この世界はめちゃくちゃ」である(2)オバマ大統領の述べた、米国は世界の「リーダー」であり続ける必要があるとの雄志と、国際問題に干渉したくとも力不足でどうにもできないこととの矛盾(3)新興大国が国際問題で影響力と発言力の拡大を図っていること。