米国の軍艦ラッセンが中国の南沙(英語名スプラトリー)諸島の近隣海域に不法侵入した後、米太平洋軍のハリス司令官が訪中した。ハリス司令官の訪中は中米両軍の年次交流計画に基づくものだが、両軍は米軍による南中国海での「航行の自由作戦」が議題かどうかは明確に表明しなかった。ただ米軍艦の今回の行動がハリス司令官の訪中に暗い影を落としたことは間違いない。(文:賈秀東・中国国際問題研究院特別招聘研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
中国側の関係当局が米側の「招かれざる客」に対して法にのっとり監視、追跡、警告を行った以外に、今回中米両軍艦に不測の事態は発生しなかった。これは主に中国側が自制を保ったためだが、事態は過去のものでは到底ない。米側は今後も南中国海でいわゆる「航行の自由作戦」を継続すると揚言している。
米国が中国の南沙諸島沿岸海域に軍艦を派遣しようとした当日、中国の王毅外交部長(外相)はメディアに「われわれは米側に対して、熟慮して行動し、軽挙妄動せず、故意に波風を立てないよう忠告する」と表明した。米側は確かに熟慮して行動する必要があるようだ。
第1に、米国が南中国海に手を出すことが南中国海の平和・安定に本当にプラスなのかどうかだ。実際には過去10数年、南中国海地域は全体的に平穏であり、航行の自由と安全に影響を与えるいかなる状況も起きておらず、中国とASEANは「南中国海における関係国の行動宣言」を締結し、南中国海における行動規範についても交渉している。だが米側がアジア太平洋リバランス戦略を打ち出し、東南アジアを同戦略の重点として以来、南中国海地域は波乱に富んでいる。米側は南中国海をめぐる国際世論を密かに操り、一方の肩を持ち、一部の国が南中国海でいざこざを引き起こすことを支持し、さらには中国の南沙諸島の島・礁に軍艦を派遣している。これは南中国海情勢の緊張を激化させるだけだ。これは南中国海の平和・安定維持という米側の言い分と相反する。