明石康氏:相互理解が現状打破の鍵

明石康氏:相互理解が現状打破の鍵。 今の日中関係は、それほど心配する状態ではない。悪い面を見れば改善の余地は大いにあるが、良い面を見れば、非常に心強く、喜ばしい面もある。しかし、良くする必要がある面が多いため、その面での改善に向けて、日中両国がともに、現状に満足せず、良くしていく努力を一生懸命にすべきだと思う…

タグ: 日中関係

発信時間: 2016-09-19 13:25:43 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

文=国際文化会館理事長 明石康

前進には対話を繰り返すのみ

今の日中関係は、それほど心配する状態ではない。悪い面を見れば改善の余地は大いにあるが、良い面を見れば、非常に心強く、喜ばしい面もある。しかし、良くする必要がある面が多いため、その面での改善に向けて、日中両国がともに、現状に満足せず、良くしていく努力を一生懸命にすべきだと思う。

例えば、東中国海における緊張した日中関係ひとつとっても、両国は現状に満足することなく、それぞれの手法について反省すべき点は反省するべきだし、海、空、領土の各問題について、現状以上に悪くしないための努力が必要である。もちろん過去においても努力がされているが、今一歩先に進まないのは非常に残念なことである。両国の軍事当局者の間で危機をどうすれば管理できるか、お互いの誤解をどう解いていくのかという点に関して、話はある程度まで進んではいるが、「あと一歩」が進まないために、恐らく日中双方の当局者はイライラしているであろうと推察される。

このような現状はとても危険である。お互いの誤解やすれ違いが起こらないよう、軍事的な相互認識のメカニズムが思わぬ方向に向かわないよう確認することが大切である。軍関係者は、海の問題は経験から比較的双方の行動について理解があるため、それほど深刻な問題はないだろうと言うが、空に関してはいささかの懸念が残る。高速飛行で行き交う航空機は、衝突による不幸なアクシデントが起きかねないからである。その可能性が否定できないからこそ、今行き止まりに陥っている危機管理メカニズムを一刻も早く整理する必要がある。この危機管理メカニズムについて、中国は日本のみならず米国その他の国ともすでに話し合いを行っているであろう。日中両国の誤解やすれ違いを防ぐためのシステム構築に一刻も早く着手し、完成させることが何よりも大切であり、当面の問題であると認識している。

以上は直近の問題だが、より長いタイムスパンの下でやるべきことも多くある。歴史問題などは好例で、まずはすでに専門家による共同研究が行われていて、前進可能な問題から着手すべきである。日中関係の障壁になっている事柄については、自国の方ばかりを向くのではなく、冷静に相手を見ながらきちんと話し合う必要がある。そして、日本にとって反省すべきこと、二度と繰り返したくないことを踏まえ、相互利益になるような事について、より多くの話し合いを進めていくべきである。

その他の懸案事項、例えば経済面の協力体制については多くの可能性があるし、悪化する地球環境の問題については、日本はすでに中国に協力しており、これからも持続していくべきだ。さらに、日中双方が抱える教育、人口減少、農村から都会への人口移動、若い研修生の受け入れ体制などの諸問題についても、対話を進めていけば日中関係は必ず良い方向に進むことが可能である。各問題を一つひとつ着実に解決していったならば、気が付いた時には両国関係が大きく前進していることが実感できるはずだ。

日中関係を支える民間の力

 民間の役割は、日中関係だけでなく世界的に認められており、これからは政府の役割が小さくなっていく可能性がある。ひとくちに民間と言っても、企業、学者、専門家、NGO、婦人団体、青年団体など各立場での役割が異なっており、これらの動きは今後更に大きくなっていくことが期待され、非常に喜ばしいことだ。

 特に若い人たちの交流には大きな期待が持てる。去年は日本から中国に3000人以上の若者が招かれたと聞いているが、今後は規模をさらに大きく、10倍くらいにしても良いのではないか。若者はオープンで、偏見もなく、好奇心も強い。彼らがお互い訪ね合い、門戸を開くことが、両国の相互理解と友情を作り上げる上で重要である。政府間が仲良くすることも本当に大切だが、政府関係はともするとわずかな誤解で悪化するため、民間による強固な相互理解を期待したい。

中国は奥の深い文化を持っており、私は学校で中国文学、唐詩や論語などを多く学んだが、今の学校では残念ながら中国文化について学ぶ機会はあまりないようだ。相互理解を深めるためにも、若い人たちにはより多くの中国文化を学ぶきっかけをつくってほしい。

ステレオタイプからの脱却を

「東京—北京フォーラム」は、政府間の交渉や対話ではなく、民間の対話である。国会議員や元閣僚などの政府関係者もいるが、参加者は学者や研究者、メディア関係者が大多数で、専門分野に長く従事する研究者たちがお互いの知識、経験、教訓を話し合い、各分科会とも非常に密度が濃い内容となっている。

例えば経済に関する分科会では、企業、銀行、金融関係者がおのおのの立場から経済政策についてさまざまな疑問を提起し、答えを求めて活発な議論を行っている。これは企業人のみならず、傍聴者にとっても非常に有益な内容で、メディア分科会においても同様に活発な議論が繰り広げられている。安全保障分科会では軍関係者や軍事問題専門の民間人が、前述の衝突の可能性などについて、満足できる答えを模索している。こうした作業の積み重ねが必ず相互理解に役立つと私は信じている。

また、「政治外交」、「経済・貿易」、「メディア」、「安全保障」の各分科会の他に、地方問題、社会問題、人口問題のうちのいくつかを取り上げる分科会を行っている。また全体会議では国全体の問題を話し合っているので、国を代表する人々の話をじっくり聞いてみることも必要であろう。

若者たちにも疑問に思ったことは、自由に質問してもらいたい。可能な限りの解答が得られるはずだし、思わぬ解答を得られたことで、相手国に対する新たな理解のきっかけをつかめるかもしれない。

私たちはともすれば、相手国に対するステレオタイプの観点にとらわれがちである。対話を通じ、今まで知らなかった相手国の側面を知ることは嬉しいサプライズにもなり得るだろう。そんな意外な発見ができるのも、「東京—北京フォーラム」、「北京—東京フォーラム」の大きな価値だと私は考える。

「人民中国」より 2016年9月23日

 

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