国防費は国防と軍隊の建設を支える重要な物的基礎であり、国家における一人一人の生存や安全、発展に関係するだけでなく、大国の国防予算は国際的な影響も引き起こす。このため、毎年、「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の期間中、中国の国防予算はしばしば世間の大きな関心を集める。
2017年3月4日、全人代の傅瑩報道官は北京で、17年、中国の国防予算の増加幅は7%前後であると発表した。つまり、17年の中国の国防予算は1兆元に達するということだ。これについて、本誌は全国政協委員で元国防部(日本の省に相当)外事弁公室主任の銭利華氏にインタービューを行い、中国の国防費の支出と軍事費の使用状況、および国家の安全保障や世界平和の維持において中国の軍隊が果たしている重要な役割について紹介してもらった。
中国の軍事費がGDPに占める割合は低い
中国の国防費の増加について、銭利華委員はまずいくつかのデータを使って10年以来の中国の国防支出の状況を簡単明瞭に紹介した。銭委員は、16年、中国の国防支出は計9543億5400万元で、前年より7.6%増加し、17年の国防予算は約1兆元余りになり、増加幅は約7%であると指摘した。簡単に振り返って次のようなことが分かる。中国の国防支出の10年の増加幅は7.5%だった。11年から15年まで、その増加幅は5年連続で2桁台を保っていた。しかし16年と17年、その数字はまた続けて1桁台に戻った。つまり、17年は10年以来、国防費の増加幅が最も少ない年である。
「中国人は『少ない出費で、たくさん、確実に物事を進めること』を基本原則として、資金を肝心なところに使い、軍事と経済における最大の効果と利益を得ようとする」。銭委員は、中国は一貫して合理的に国防支出を割り振りすることを重視し、国防建設と経済建設の調和した発展を堅持し、国防建設と軍隊改革の実際のニーズに基づいて、国防費の規模のコントロールを重視し、毎年、適度な増加幅を保ってきた、と指摘した。
さらに直観的に中国の軍事費支出の状況を理解してもらうために、銭委員は世界第1の経済体である米国と第2の経済体である中国の軍事費について比較を行った。16年、米国の国防費の予算は5970億米ドルで、17年は6187億米ドル、トランプ大統領は18年に軍事費を540億米ドル増加する計画で、その増加幅は9.3%に達する。中米両国の軍事費の増加幅のGDPに占める割合を比べると、中国の軍事費は通常1.3~1.5%で、米国は通常3.4%を保っている。国民1人当たり経費の支出から見ると、中国の1人当たりの軍事支出は米国より大幅に少ない。
銭委員は次のように考えている。ある国家の国防支出はその国の安全保障戦略と国防政策によって決まる。米国が建設するのは、その世界的な安全保障戦略を支え、軍事上、前線配備まで到達できる軍隊だ。一方、中国が建設するのは、国家主権の安全保障と発展の利益を守る軍隊で、実施するのは防御的な国防政策である。軍事費の増加量やストック、軍事力を投入する方向から見て、中国の国防費は完全に中国の防衛政策、つまり防御的な国防政策を反映している。