フィリピンのドゥテルテ大統領は、ユニークな人物だ。
昨年夏はまだ、「南中国海仲裁案」という茶番の真っ最中だった。ドゥテルテ大統領が就任し、10月に訪中すると、両国関係は急速に改善され、蜜月期に入った。ドゥテルテ大統領は、中国はフィリピンにとって真の良き友人、兄弟だと発言した。両国はその後、数十億ドル規模の協定に署名した。フィリピンのバナナが中国に輸出され、中国はさらにフィリピンの鉄道建設を支援することになった。
それから間もなく、ドゥテルテ大統領は態度を急変させ、フィリピンが領有権を主張する南中国海の係争中の島嶼に部隊を派遣し、占領すると表明した。さらに6月12日のフィリピン独立記念日には、中興島に上陸し旗を立てる予定だと話した。
この情報を耳にすると、多くの中国人は驚き息を呑んだことだろう。駐中国フィリピン大使は本日、ドゥテルテ大統領の「大胆」な発言は、フィリピンの現在の対中政策に根本的な変化が生じたことを絶対に意味しないと述べ、丸く収めようとした。
ドゥテルテ大統領は「実務的」な政治家で、度胸があり、何でも発言する。当然ながら否定するべき時には、顔色一つ変えずにきっぱり否定する。
例えば南中国海の仲裁問題で、両国関係は昨年、一触即発の事態に陥ったが、ドゥテルテ大統領は就任後すぐに中国を訪問した。
南中国海の仲裁が、自ずと一枚のちり紙になった。
これだけでも、ドゥテルテ大統領の功績は大きい。「バナナを売るために、フィリピンの大統領も必死だ」という冗談もあるが、これには確かに大きな効果があった。中国は南中国海情勢が沈静化し、フィリピンは経済の大型契約を手にした。両国関係は各自が必要とするものを手にし、ウィンウィンが続いている。今年の両会(全国人民代表大会、全国政治協商会議)の会期中、中国商務部長は自らフィリピンを訪問し、共同事業について協議した。
これはドゥテルテ大統領の非常に実務的な点だ。米国の手先になり、南中国海問題で中国に対抗しても、フィリピンにとって百害あって一利なしだとはっきり理解している。
しかしドゥテルテ大統領は中国にベタついてはいない。
例えば最近、南中国海問題をめぐる態度で、やや「後退」した。南中国海の係争中の島礁を占領し、建設を強化すると発言した。さらにフィリピンは今年5月、米国と合同演習を実施する。
この原因は、それほど複雑ではない。
まずフィリピンは米国の伝統的な「小さな仲間」だ。ドゥテルテ大統領は就任後、フル火力でオバマ前大統領を憤らせたが、一国の運命を左右する大統領として、常に自由奔放であるはずがない。ドゥテルテ大統領の中国を支持するやり方は、フィリピンの国益に関わる。これを妨害しようとする、外部の勢力も存在する。
次に、ドゥテルテ大統領は国内にも姿勢を示す必要がある。
中国を信頼していないフィリピン人も多い。しかし最近フィリピンで行われた世論調査によると、「中国」のポイントは初めてマイナスからプラスに転じた。そのため信頼構築は、時間の問題だ。
しかし中国が南中国海問題で態度を変えないことも明白だ。
中国外交部の華春瑩報道官は先月末、フィリピン外務省の関係者を今年5月中国に招待し、両国の南中国海問題をめぐる二国間協議枠組みの初会合を開くと発表した。
中国はすでに、次の2つの姿勢を明確に示している。まず南中国海の主権をめぐる中国の態度は揺るぎなきものであり、駆け引きの余地はないこと。次に食い違いについて、中国人は平和的な解決を好み、暴力的なやり方は望ましくないことだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年4月18日