アジア安全保障会議2017、第16回シャングリラ会合が2日、シンガポールで開幕した。2002年の第1回以来、同会合はアジア太平洋の安全の動向、主要国の防衛政策の動向に焦点を絞ってきた。しかし近年、中国の台頭とアジア太平洋地域の権力構造に新たな変化が生じたことで、中国に関する地域安全重要問題をめぐり激論が交わされ、欧米各国が地域安全に関する発言権を争奪する重要な国際会議となっている。
今年の同会合には、主に次の見所がある。
(一)代表団を率い出席する米国のマティス国防長官が、トランプ政権のアジア太平洋安全戦略をいかに系統的かつ全面的に説明するか。
年初の発足以来、トランプ政権のアジア太平洋政策が徐々に明らかになってきた。TPP離脱を宣言し、朝鮮問題を米国のアジア太平洋の外交・安全の優先事項とした。アジア太平洋の同盟国に米軍の経費負担拡大を求め、新しい二国間貿易協定の締結を主張した。南中国海・美済礁から12カイリ内に無断で進入し探りを入れ、「航行の自由」の原則を維持した。トランプ大統領のアジア太平洋安全戦略が、徐々に浮かび上がっている。
しかし一連の重要な要素がまだ「開示」されていない。例えばトランプ政権はオバマ時代の「アジア太平洋リバランス戦略」を終わらせる可能性が高いが、それではトランプ政権のアジア太平洋戦略とは何だろうか。「リバランス」という言葉の含まれない「リバランス戦略」なのか、米国のアジア太平洋における駐軍及び海軍建設の強化による、大統領選で強調していた「パワーで平和を求める背略」の貫徹なのか、それとも米国メディアが伝えた「アジア太平洋安定強化戦略」なのか。
(二)トランプ政権はアジア太平洋の重要問題と同盟関係を処理する際に、どのような原則を用いるか。トランプ大統領は選挙中の主張により、世界に「新孤立主義」の印象を残した。トランプ大統領は先週NATOサミットに出席した際に、米国と大西洋を跨ぐ同盟関係について基調演説を行った。その中で米国の欧州同盟国への支持は絶対的なものではなく、「米国の利益と判断」により決まることの方が多いと強調した。
(三)米国が朝鮮の核問題に対して、どのような政策と姿勢を示すか。マティス国防長官は最近、米CBSテレビのインタビューに応じた際に、朝鮮への核攻撃は「災い」と明言した。問題は朝鮮がミサイル実験を繰り返し、トランプ大統領が朝鮮への批判を強めていることだ。朝鮮の核問題に今後どのように応じるのか、マティス国防長官は演説でアジア太平洋の防衛界にどのようなメッセージを伝えるのか。
(四)南中国海問題。2016年7月下旬より、中国とASEAN諸国の取り組みにより、南中国海には安定と実務的協力という新たな流れが生まれている。南中国海地域の商業ルートの安全と航行の自由を守ることは、中国の確かな利益に合致する。南中国海の島礁建設問題において、中国は自制的な姿勢を維持している。その反対に米国は「航行の自由」を旗印とし、接近・横断するなど軍事的挑発を続けている。米日の軍艦は5月上旬、南中国海で合同演習を行った。日本はさらに高圧的に、最大規模の軍艦「いずも」を派遣した。米日などの南中国海における軍事演習と軍事的存在感の強化こそが、南中国海の「軍事化」を促す最大の推進力となっている。
今回の同会合で、南中国海問題が議論の焦点になる。マティス国防長官は南中国海問題において、米軍の「航行の自由」という原則の強化を続け、中国の正当で合法的な南中国海の島礁の建設に圧力をかけ続けるはずだ。日豪などの国も同会合を利用し、中国「海軍脅威論」をアピールし、中国のシーパワーの発展ペースが早すぎると批判する。一部のASEAN諸国も南中国海問題を煽り続け、米日などの国が南中国海への介入を強化し、アジア太平洋における軍事的存在感を示し続ける米国の決意と義務を示すことを願うだろう。南中国海情勢は静まろうとしているが、風がやまない。
しかし、同会合を利用し中国の防衛・安全政策のイメージダウンを図ろうとする目論見はすべて実現しない。会期中、会場内外で激しい駆け引きが展開される。アジア太平洋の安全情勢は今日、非常に重要な時期に差し掛かっている。朝鮮の核兵器など地域の重要問題を解決する上で必要になるのは、大国間の調整と協力であり、各国の防衛部門は戦略的な目と善意を示す勇気を持ち、アジア太平洋の安全・防衛協力を建設的に推進する必要がある。こうして初めて地域の安定・繁栄・平和が真の保障を手にする。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年6月2日