■米国:同盟と利益を求める
安倍首相は早くも2007年に中国を念頭に置く米日印豪「4カ国グループ」の構築を提唱したが、訳あって棚上げされた。2018年1月18日に地域防衛フォーラム「Raisina Dialogue」がインドの首都ニューデリーで開催された。学術フォーラムではあるが、ある程度において米日印豪の合同対話を実現した。
米国はこれと同時に、地域の他の国々との軍事協力も全面的に進めている。
ベトナムは南中国海の監視・抑制において有利な位置にあり、米国の「インド太平洋戦略」の重要な足がかりだ。このため米国はベトナムとの関係改善を急いでいる。米国は2017年5月、沿岸警備隊の退役艦ハミルトン級長距離カッター「モーゲンソー」をベトナムに供与することを決めた。今年1月25日にはマティス国防長官がハノイを訪問し、米空母による3月のベトナム訪問を決めた。米空母のベトナム訪問は1975年のベトナム戦争終結後初となる。
シンガポールは米国にとって「インド太平洋戦略」の鍵を握る国の1つであり、チャンギ海軍基地は米軍が東南アジアにおける唯一の足場だ。2017年10月21日にシンガポールのリー・シェンロン首相が訪米した際、トランプ大統領は「過去数10年間、われわれは良好な関係を保ってきたが、今ほど緊密であったことはない」と述べた。
同盟を結んで自らの国益を実現するのは、米国の基本的行動パターンだ。湾岸戦争でもコソボ紛争でも米国はそうした。だがビジネスマン出身のトランプ大統領は、より直接的、露骨に利益を図る。初の訪日でトランプ大統領は日本に対して、日米貿易で大きな利益を得ていることを批判したうえ、安全保障で一層の負担を要求した。第2の訪問国である韓国でも同様に安全保障で一層の費用負担を要求したうえ、米韓自由貿易協定の再交渉をすると脅した。