国際通貨基金(IMF)は今年のG20首脳会議に合わせ作成した報告書の中で、現在の世界経済は貿易関係の緊張に直面しており、景気低迷のリスクが存在すると指摘した。貿易戦争が全面的に展開されれば、世界のGDPは2020年に0.5%減少し、これにより4550億ドルの損失が生じるという。これはオーストリアのGDPに相当する。
同報告書の分析によると、現在の世界経済は下り坂に入っており、この2010年に始まる経済成長は今年でちょうど満10年になる。世界経済の成長率が2017年に3.8%のピークを迎えると、2018年には3.4%に低下した。IMFや経済協力開発機構(OECD)などは、今年の成長率を3.1%前後と予想している。下り坂に入ったが、各国が良好な経済関係を維持するか、共に苦難を乗り越えることができれば、この下げ幅を縮小することができる。経済関係を上手く維持できなければ、下げ幅がさらに拡大する。そのため下り坂において、いかに共に苦難を乗り越え、各国間の経済関係の緊張を和らげるべきかが、各国が注目する、G20が回答を示すべき問題になっている。
現在の世界経済における最も不利な兆しは、世界の製造業購買担当者景気指数(PMI)で、5月は2カ月連続で前月を下回り、分水嶺となる50を割り込み49.1となった。主要経済国のうちこれを上回っているのは米国とフランスのみだが、前者は50.4、後者は50.6に留まっている。その他の国はいずれも50を割り込み、最低のドイツは44.5。PMIの低下は、世界経済が今後低迷する可能性を示している。
世界貿易機関(WTO)は4月に発表した最新の報告書で、今年の世界貿易成長の予想値を従来の3.7%から2.6%に大幅に引き下げた。貿易摩擦のエスカレート、経済の不確実性の激化などの影響を挙げている。世界の貿易は深い調整を迎えており、同時に世界経済は構造・制度的な問題に直面している。金融危機後、欧米諸国は自国の経済構造の改革・調整に専念するのではなく、財政・金融政策の緩和により経済を刺激した。政策の手段を使い果たし構造問題が残されれば、新たな危機が到来する。また世界経済の制度面の計画にも問題が生じている。米国は中国の貿易を「不公平」と批判し、中国は米国が貿易上のいじめを行い、極度の圧力により中国の核心的利益を手放すよう求めていると反撃した。これは主要経済国間の関係が緊張し、互いに意思疎通が不足していることを示した。