韓国メディアは最近、在韓米軍の生物化学兵器実験室に対する韓国民間団体の疑問と怒りを相次いで報じている。韓国政府に対して調査を行い、情報を開示し、実験室を閉鎖するよう求めている。韓国メディアは最近さらに、在韓米軍が生物化学兵器実験室の追加を検討している動きがあると伝えた。
長年に渡り、在韓米軍の韓国におけるスキャンダルが後を絶たない。今回の報道は再び韓国人に、自国が「米軍の生物化学兵器実験場」に成り下がるという懸念を募らせた。
「ジュピタープロジェクト」が発覚
米ユタ州の軍事研究機関は2015年5月、韓国の烏山空軍基地に活性を持つ炭疽菌を送った。本件が発覚すると、韓国社会が騒然とした。米国が韓国で極秘裏に進めていた、朝鮮をターゲットとする生物化学兵器研究計画、すなわち「ジュピタープロジェクト」が浮上した。
在韓米軍の説明によると、炭疽菌は烏山基地の実験人員の訓練に使用されるもので、朝鮮による生物化学兵器攻撃の可能性に対応することが目的だ。活性を持つサンプルは「誤配」だったという。ところがこの説は米軍が韓国で極秘裏に生物化学実験を行っているという現地人の懸念を払拭しなかった。
韓国メディアの報道によると、ジュピタープロジェクトは在韓米軍が2013年6月に極秘裏に開始したプロジェクトで、炭疽菌の他にもA型ボツリヌス毒素という猛毒物質が含まれた。その毒性は炭疽菌の10万倍にのぼる。
韓国国防部と在韓米軍が2015年末に公開した情報によると、米軍は2009年から2015年まで不活化処理を施した炭疽菌を韓国に送り、16回の実験を行っていた。またペスト杆菌を1回導入していた。
プロジェクトはなおも継続
ジュピタープロジェクトの発覚後、在韓米軍は関連実験プロジェクトを中断しておらず、むしろ実験基地の数を増やし続け、実験室の人員を拡充している。在韓米軍は2016年5月に釜山で炭疽菌実験室を設立した。韓国メディアによると、ソウル、釜山、烏山、群山の4カ所の在韓米軍基地で生物化学兵器実験室が設立されている。
韓国国防部と在韓米軍司令部は昨年12月、釜山港第8埠頭米軍基地内で、ジュピタープロジェクトの後続プロジェクト、コードネーム「セントー」を実施すると発表した。説明によると、同プロジェクトは生物化学兵器の脅威を判別し、理解を深め対応力を強化するもので、関連体制の安全性が確認されているという。しかしプロジェクトが公開されると、釜山市民から即座に抗議を受けた。
韓国メディアの報道によると、セントープロジェクトを担当する米国の研究機関は今年3月、実験室の人員の募集を開始した。公開された勤務先にはソウルや釜山の他に、大邱、東豆川、鎮海、倭館などがあり、米軍の在韓生物化学兵器実験室がなおも増加していることが分かる。在韓米軍は、同プロジェクトは釜山港第8埠頭米軍基地内と平沢基地の「キャンプ・ハンフリーズ」のみで実施されると弁明したが、実験室人員の募集と勤務先については説明しなかった。これは韓国人の懸念をいっそう深めた。
長期的に物議を醸す
「在韓米軍地位協定」によると、米軍が在韓米軍基地に有害物質を運び込むためには、事前に韓国政府に通報しなければならない。さらに在韓米軍は「生物化学兵器法」と「感染症予防法」などの韓国国内の法律を遵守する必要があるが、米国側がこの義務を果たしていないことは明らかだ。韓国メディアは、「生物兵器禁止条約」の締約国である米国は、平和的な用途を除く微生物製剤、毒素、及びその他の武器の開発・生産・貯蔵・保有を禁じる義務があるとしているが、在韓米軍はこれをまったく無視している。
韓国メディアの報道によると、セントープロジェクトは今年9月に終了後、新たな「総合早期警戒メカニズム」に転じる。これは米軍の生物化学兵器プロジェクトがなおも続くことを意味する。アナリストは「韓米同盟関係の影響を受け、韓国政府は米軍の生物化学兵器実験室の問題を処理する際に数多くの制約を受ける。民間からの抗議と反対の声が日増しに高まり、関連係争が長期化することになりそうだ」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年8月9日