日本の専門家が見る「両会」(4) 元NHKアナウンサー 木村知義

日本の専門家が見る「両会」(4) 元NHKアナウンサー 木村知義。

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発信時間:2021-03-11 15:11:46 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

「第14次五カ年計画」の向こう側



   今回の「政府活動報告」(以下「報告」)は、新型コロナウイルス感染症と「中米摩擦」をはじめとする時代の激動の中で直面する多くの課題に立ち向かう、まさに厳しい闘いの真っただ中から発せられたメッセージだと言える。とりわけ中国の人々が一丸となって新型コロナに立ち向かい、果断な政策判断と社会的処方をもってすれば乗り越えることができたという確信が「報告」を力強いものにしている。その全体を貫いているのは「経済」の語源とされる「経世済民」の思想だと言えよう。すなわち、人民を大切にして等しくその生活を向上させ安心して豊かに暮らせる社会を目指すということであり、そのために立ち向かうべき課題と問題解決、目標実現への道筋が多方面、多領域にわたって具体的かつ余すところなく語られている。


焦点を民生に絞って


    焦点を民生に絞って読んでみると、まず、貧困と雇用について深く語られていることに気付く。


  「貧困脱却の堅塁攻略戦」では、絶対的貧困の撲滅を達成したことにとどまらず、「再貧困化・貧困化の可能性が高い層へのモニタリング・サポートを強化」という重要な視点が提起されている。そして「共同富裕促進行動要綱」を策定して発展の成果がより多く、より公平に全人民に行き渡るように「包摂性民生、基本的民生、最低ライン保障型民生の建設を強化」することを強調している。これはひとり中国にとどまらず、いま世界が苦しむ貧困と格差の拡大に対しても大きな示唆となるものである。


  「雇用は民生の中核」と語る雇用については、新卒者への雇用対策は言うまでもなく、失業者の再就業、障害者や就業者ゼロ世帯の成員など就業困難層向けの就業支援策さらに高技能人材育成に至るまで、きめ細かく具体策を示している。同時に、企業所得税の優遇策など小企業・零細企業と自営業者への手厚い目配りも、中国社会をより成熟させていくための重要な施策だと感じた。


   これらの諸施策をけん引するのが付加価値の高いハイテク産業やデジタル産業を軸にしたイノベーション駆動型社会への道筋だ。「基幹コア技術の堅塁攻略戦」では「社会全体の研究開発(R&D)費を年平均7%以上増やし、その対国内総生産(GDP)比が第13次五カ年計画期の実際値を上回るようにする」目標が掲げられた。イノベーションを強力なてこにして産業、科学技術にとどまらず生態、環境、生活、文化に至るまで、より質の高い成長と発展への道を歩む胎動が見えてくる。


新たな「新中国」へ


   さらに、注目の「双循環」。「国内の経済循環体系をよりどころにして世界の要素・資源を引きつける強力な重力場を形成し、国内・国際双循環を促進する」というものである。労働集約型の低価格を競う輸出主導型から経済・産業構造が大きく成長、変化していることを物語るとともに、中国国内の広大な市場と発展の速度と段階の異なる国内地域間の差異を需要創出の多様性、多層性として零細・中小企業から最先端企業までの産業力を縦横に生かす可能性も読み取れる。それがまた国内の消費の拡大と質的向上にとどまらず、雇用創出の動力につながっていくという構図である。


   「人民を不安にさせて不正な利益を得てはならず、市場主体が安心して経営し、身軽になって発展できるようにしなければならない」と述べて、社会主義の基本的経済制度を堅持しながら「非公有制経済の発展を奨励・支援・リードしていく」ことで「多種類の所有制経済の共同発展を促進する」と、中国の特色ある社会主義市場経済発展の要点を再確認していることも見落としてはならない。


   「感染症対策と経済・社会発展をよりよく統一的に進める」ことを基礎に、第14次五カ年計画とその重要な初年度の政策目標を示した今回の「報告」は、成長の速度よりも質を重視する新たな発展モデルへの転換と自立自強の中国の特色ある社会主義現代化国家の全面的建設への「新たな征途」へと歩みを進める強い決意を込めたものとなっている。


   1949年に成立した中国を私たちは「新中国」と語ってきたが、そこにもう一つの「新」を重ねた、新たな「新中国」への道を開く歩みが始まっていることを実感しながら読み進んだ「政府活動報告」である。

 


 

人民中国インターネット版 2021年3月10日


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