ウクライナ国家原子力規制監督局委員会のオルガ・コシャルナヤ氏はこのほど人民日報の取材に対し、「福島第1原発の100万トンに上る放射性汚染水の海洋放出という日本政府の決定は『野蛮』な行為と言える。原発汚染水中の放射性物質は人類の健康を脅かすことになるだろう」と指摘した。
コシャルナヤ氏は原子力問題の専門家として福島原発事故への対応の進展を注視し続けてきた。福島原発事故の発生後、かつてチェルノブイリ原発事故への対応に関与したウクライナの専門家らが日本政府と東京電力に書簡を送り、原発事故への対応について提言しという。「だが東京電力の対応は遅く、決定を誤り、好機を逸し、生態環境に取り返しのつかない被害を与えた」としたコシャルナヤ氏は、「原発汚染水の海洋放出という日本政府の最近の決定は、さらに過ちを重ねるものだ。原発汚染水中の放射性物質は生態環境と人類の健康に深刻な被害をもたらすことになるからだ」とした。
チェルノブイリ原発事故の発生から今年で35年になる。コシャルナヤ氏は、「チェルノブイリ原発事故の発生後、ソ連政府は極めて短期間のうちに、国の力を挙げて事故の災禍に対処し、災害による被害を最低限に抑えるべく努めた。1つには、大量の人員と物資を投入して大気中の放射性元素を除去した。もう1つには、爆発を起こした原子炉を緊急でコンクリートを流し込んだ遮蔽物で封じ込めた。統計では60万人以上が救援に参加した。政府はまた、最も深刻な汚染地域から人々を避難させて、事故による放射線被ばくが人々の健康に与える影響を大幅に抑えた。ソ連政府は1986年から1991年の間に、事故による被害の除去に約125億ドル相当を投じた。ウクライナ政府も独立後、多くの措置を講じて原子炉遮蔽物の安全を確保し、汚染地域の環境を徐々に回復させている」と説明。
また、「35年後もなおチェルノブイリ原発事故の警告には深く考えさせられるものがある。原発汚染水の海洋への大規模な直接放出よりも安全で科学的な、放射性汚染を減らす手段が日本にはある。それは蒸発、吸着、電気分解などの方法だ。日本政府は放出して終わりにするのではなく、こうした技術や経験を参考にすることが完全にできる」とした。
コシャルナヤ氏は、「原発汚染水の海洋放出という日本の決定は国際問題であり、周辺国の利益に関わる。とりわけ様々な放射性物質を含む原発汚染水は海流の作用で近隣諸国の海域にまで拡散する恐れがある。世界の生態環境の安全と各国の人々の命や健康に関わる問題において、日本政府は尽くすべき国際的義務を担うべきだ。独断で一方的行動を取ってはならない」と特に強調した。(編集NA)
「人民網日本語版」2021年5月13日