利益の食い違い
信頼の危機のほか、米国と欧州の経済貿易及び大国関係などの面にも実質的な食い違いがある。これらの「厄介事」を容易に解消できるはずがない。
米国は過去数年、国家安全を理由にEUやその他の国に鉄鋼及びアルミニウムの追加関税をかけた。欧州諸国は米国のテック大手にデジタルサービス税をかけた。双方はこれをめぐり争い続けている。一部の米メディアの報道によると、米国とEUの指導者は、来週ベルギーのブリュッセルで開かれる会議での貿易紛争の終了を目指している。これには航空機補助金の紛争、米国による鉄鋼及びアルミニウムの追加関税、EUのそれに対する報復措置などが含まれる。
しかし双方が交渉のテーブルで大きく前進できるかは未知数だ。米ニュースサイト「ポリティコ」は記事の中で、「EUと米国の協力再開が一挙に成し遂げられることはない。米当局者はよく欧州諸国が独占禁止調査及び監督管理の面で米テック企業を不公平に扱っていると批判する。一部の欧州諸国は米国のせいで中国との重要な経済貿易関係が破壊されることを望まない」と指摘した。
米国は同盟国を抱き込みロシアや中国などに共同で圧力をかけようとしているが、欧州では「共鳴」が生じていないとの分析もある。ミュンヘン安全保障会議の主催者側が9日に発表した年間安全報告書は、「世界は目下、新型コロナウイルスとの戦い、気候変動への対応、軍備抑制などの議題で多国間協力を必要としている。西側諸国とロシア・中国などの国は、競争と協力を切り離してはならない」とした。あるEUのベテラン外交官はメディアに、「我々と米国は100%団結しているわけではない。これが現実だ」と述べた。
独シンクタンク・ベルテルスマン財団と米シンクタンク・ジャーマンマーシャル財団がこのほど共同発表した世論調査によると、米国の前政権の不十分な感染対策により、欧州でその「世界のリーダー」としての評判が落ちているが、バイデン氏の就任後も回復は見られない。一部で期待されている「バイデン効果」が生じていない。
ミュンヘン安全保障会議の報告書は、米国の戦略の重心はすでにアジア太平洋に移動しており、米国は欧州から徐々に身を引いていると指摘した。ミュンヘン安全保証会議のヴォルフガング・イッシンガー議長は、米国に安全保護を求める時代はすでに過去と化しており、欧州は自身の戦略的位置づけを見直す必要があると判断した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年6月11日