先般、インドが「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の貿易分野への交渉参加を見送ったとの報道を受け、米国主導のこの構想に対して懐疑的な見方が広がっている。ある海外メディアは「一部の国では、環境やデータ配信などの分野で米国式の基準採用を迫られることへの懸念が根強く、米国側が主導する中国を排除したサプライチェーンの調整にも反発がある」と指摘する。米国側が、他国が切望する市場参入の拡大を交渉の重点に含めることを拒否したのは、「馬は走らせたいが、草を食べさせたくない(利益は得たいが、代償を払いたくない)」ためで、協力への誠意を欠くものだ。中国を排除する意図が濃厚なインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、実のところ土台が脆く実現は困難だ。
「インド太平洋戦略」の経済分野での取組を実行するにあたり、IPEFは地政学的色彩から脱することが難しい。この枠組みは貿易・サプライチェーン・クリーン経済及び公平経済の4つの柱をめぐって協力を展開している。いわゆる「協力」とは、米国を中心とした「フレンド・ショアリング」を推進するもので、国際サプライチェーンをいわゆる「友好国」や「信頼できるパートナー」に移管することである。米国の政治家が「最も厳しい競争相手」とみなす中国は、当然「輪の外側に排除」される。米国政府がこの枠組みを利用すれば、他の加盟国に米国市場を開放したり、関税や非関税障壁の撤廃などといった譲歩をすることなく、他の加盟国が米国に市場を開放し、米国の貿易規則や規則支配権などを受け入れるという優遇が受けられる。米国政府はこれにより、IPEFの他の加盟国が米国の利益に奉仕できるようにしようと企んでいるのだ。
米国のこのような策略・やり口を、インドを含む他の国々はますますはっきりと見定めるようになった。米国の最も重要な目標はすなわち、中国を封じ込めるという自国の戦略目的の実現であり、より多くの国が利益を得るためのプラットフォームを提供することではない。実際のところ、反発しているのはインドだけではない。多くのIPEFメンバーが様子見の姿勢で参加しているのだ。特に中国は、すでに世界と地域で大きな影響力を持つ大国となり、国際産業チェーンの重要な一部を担う世界最大の貿易国であるため、多くの国が中国との経済・貿易協力を中止することを望んではいない。今のところ、米国は他国に対して確実でそれ相当の経済的補償を行う力もないし、行うつもりもない。