郁南県は広東省の西にある。長さ30キロの南江が県内を貫いて流れ、青い山と水の景色が美しいところだ。ここはかつて海路と陸路のシルクロードを結ぶ重要な道であると同時に、百越文化(かつて中国東南部の江蘇、浙江、福建、広東、広西、湖南、江西などの南の地域に住んでいた越族の各系統を百越といい、その人たちが作った文化)がよく保存されている地域の一つでもある。
清の古堡――光儀大屋
郁南県は豊かな観光資源にめぐまれ、ざっと見てまわるだけでも四、五日はかかるという。それら見所の中で特に挙げなくてはならないのは「乱世のノアの箱舟」と呼ばれる清(1644~1911年)の古堡――光儀大屋である。
光儀大屋は郁南県の政府所在地から車で約40分、連灘鎮にある。敷地面積約7000平方メートル、建築に10年間も費やしたという。その中には136の部屋があり、迷路のように入り組んだ通路でつながれている。壁と玄関の大門には洪水、火事、盗難を防ぐ「三防」の機能がある。厚い土で築いた壁は砲火も通さず、この先、まだ100年も使えると言う専門家もいる。
屋内に入ると、その配置は迷宮のようで、瓦にはいろいろの図案が刻まれ、ひさしの下には花や草、昆虫の模様が描かれている。一面の瓦の外側の下には囲い壁の通路がある。この通路は屋敷内のすべての部屋をつなぎ、人々が歩くことができるし、外来の襲撃を防ぐこともできる。