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大メコンに生きる(4)人々の保護神 熱帯雨林
発信時間: 2009-06-29 | チャイナネット

 

共通の憂い

タケークは、周囲数十キロがうっそうとした熱帯雨林に囲まれている

ナパガー村のあらゆる食物は熱帯雨林からもたらされる。村人に農産物を栽培する伝統はなく、主な食物はさまざまな野生植物である。しかし、この数年、ナパガー村の伝統的な食物の一部は消失しつつあり、完全になくなってしまったものもある。蒸し暑い日が次第に長くなり、カンムスオエンさんは日々悩んでいる。以下は彼と奥さんの会話である。 「苦筍はまだ十分あるかしら」 「あまりないよ。疲れた。小さなものばかりで、大きなものはなくなってしまった」 「今日の苦筍スープには、ほかに何を入れようかしら」 「苦筍だけでいいだろう。魚でも捕ってこようか。採る人が増えて、苦筍は減ってしまったね」 「今後、どうしたらいいのかしら。苦筍がなくなったら、何を食べるの?」  マンタン村周辺の平地はみな竹林である。ナパガー村と同様、筍はマンタン村ダイ族の伝統食物でもある。ボーグアンジアオさんや村の人々も、筍が見つかりにくくなっていることに気づいた。奥さんも愚痴を言う。

「昔はこの季節になれば、竜竹、黄竹、毛竹などがどれもたくさんあったのに、今ではだんだん少なくなってしまった。……私たちは甘筍だけしか食べてなかったけれど、今では竜竹も食べるようになって。そのうち竜竹までなくなってしまうかもしれないわね」

ゴムの木に切り口をつけている地元の人
熱帯雨林は「地球の肺」と呼ばれる。緑色植物の光合成によって、太陽エネルギーに転化できるだけではなく、さまざまな有機物を形成できる。光合成が大量の二酸化炭素を吸収して酸素を供給できることで、地球大気圏の二酸化炭素と酸素のバランスが維持され、万物が絶えず新鮮な空気に恵まれている。

熱帯雨林の存在は、人類が地球上で生まれ、生存するための基本条件の一つである。太陽の光、水源、穀物、食塩などと同様、人類に欠かせないものなのである。

メコン川流域の熱帯雨林は、植物天国であり、動物天国でもある。ある科学研究の資料によれば、ラオスの原始雨林に生息する生物の種類は非常に豊富で、すでに判明している鳥類だけで437種もいるという。ラオスの南部では、320以上も魚類がいるという。もし、世の中にいわゆるエデンの園が本当に存在するのなら、それはまさに熱帯雨林に違いない。

この百年来、近代化の発展に伴い、メコン川流域のゴム栽培面積は急激に拡大し、この地域に巨大な富をもたらした。原始林はほとんどがゴム林や畑となり、残った雨林は、生態の孤島となった。ゴム林は無制限に広がり、熱帯雨林の連続性が破壊された。ひたすらゴム林を発展させた結果、生態系のバランスが崩れてしまったのである。  ゴム林の発展は熱帯雨林に対する破壊だけではなく、そのものが「汚染」であった。樹液の収集は、ゴムの木の転化能力と土壌の生命力に依存したものであり、輸血と同様、血液が足りなくなったら、さらに多くの栄養を補わなければならない。研究によると、ゴムの木の栽培による土壌の浸食率は熱帯雨林の3倍であり、土地のもつ生産力の連続性に深刻な影響を及ぼす。土地の生産力が次第に失われてくると、人間はその土地を放棄し、新しい土地を開墾してさらにゴム林を栽培する。悪循環である。その結果、ゴムの木の生存に必要な気候や環境も、雨林がなくなるにつれて失われてゆく。

ラオス中部の都市タケークの通りで目に付くのは女子学生ばかり。同世代の男子の半分は寺院で教育を受けている

撮影チームがナパガー村を去ろうというころ、めでたいことがあった。カンムスオエンさんの新しい家が完成したのである。村中の人がお祝いにやってきて、夜を徹して自家醸造の米のお酒を飲み、歌い、踊った。雨林で新しい家を建てるのは、木材を集めることが容易でないため、一苦労であったという。ラーオ族の伝統と経験に従えば、木なら何でも切ってかまわないというわけではなく、一度にたくさんの木を切ることもできないため、カンムスオエンさんは2年がかりでようやく新しい家を建てることができた。

この先、カンムスオエンさんも付近の雨林を伐採し、ゴムの木を栽培することになるのだろうか? そうでもしない限り、彼は永遠に苦しい生活を続けることになる。村を後にし、車の中でそんなことを考えたが、祈るしかないと思った。

神様、どうか彼にご加護を。(文・写真=李暁山)0810

 

 

 

 

「人民中国」より 2009年6月29日

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