トヨタは今年、2015中国国際福祉博覧会に4台の車を展示した。日本人は障害者のことを世界で一番考えている。そしてトヨタは日本で福祉車両を最も生産している企業である。
トヨタはなぜ福祉車両(障害者向け自動車)に力を入れるのか。中国では福祉車両が大きな市場になるとは見られておらず、多くの企業はその市場を重視していない。しかしそのことは、同市場に大きな潜在力がないことを意味するものではない。
ある統計によると、中国には2億人の高齢者と8500万人の障害者がいるとされる。しかし中国の自動車メーカーの多くは福祉車両の市場を重視していない。福祉車両の分野で優れた技術を有するトヨタにとって、同市場の成長力は魅力的であり、そのためにトヨタは中国で福祉車両の研究開発を続けているのである。
こうした福祉車両の開発も、「モノづくりは人づくり」の理念と同様に、トヨタの「急がない」哲学によるものである。「急がない」哲学はトヨタの自信の表れである。1890年代、多くの自動車メーカーは大型排気量車で競い合った。しかしトヨタはハイブリット車の開発に力を入れ、最終的に同市場の覇者となった。どんなライバルが現れようとも、決してあわてず、新しい時代の到来をゆっくり待つのが、世界ナンバー1の地位を獲得するための同社の哲学なのである。