(1)「ドル覇権」の転換
金融市場と世界経済をめぐる主要20カ国・地域(G20)の首脳会議は15日、ワシントンで閉会した。会議に出席した指導者たちは、国際金融システムに必要な改革を行っていくことで一致した。改革で解決しなければならない重大問題の一つは、国際貨幣システムの多元化をいかに着実に進め、国際貨幣システムの安定をいかに共に支えていくかということだ。米ドルを世界の単一決算貨幣としてきたこれまでのメカニズムが調整され、「ドル覇権」が転換されることになるのではないかという意見もある。
かつてはロックフェラー社の投資顧問を務め、現在はニューヨーク廖氏投資集団の董事長を務める、米国滞在の金融専門家・廖子光氏は、今年新しく出版された「金融戦争」の中で、「ドル覇権」という概念についてわかりやすく論述している。廖氏によると、「ドル覇権」とは、「世界の金融システムと貿易システムの中での準備貨幣としての米ドルの地位(それにはいかなる実体の支えもなくいかなる規律による拘束もない)を利用して、米国政府が、世界の指導と支配に有利な制度を導き作り上げる」ことだという。廖氏に言わせると、世界貿易とは、「米国がドルを発行し、貿易相手国が石油・自動車・テレビ・衣服など一連の商品を生産し、米国がドルでこれらを購入する」という一種のゲームと化している。米国は国防関連の工業と研究を維持しながら、従来型の製造業を日本とドイツにまず委託し、衣料製造業や低技術製品の製造業をアジアやメキシコに委託している。最も重要なのは、価値のない債券やその他のデリバティブを使った新たな金融部門を米国が作り出したことだ。このような仮想経済の過度の発展は、金融危機の主要源の一つとなり、世界経済の発展のバランスを崩した原因となった。
世界金融は現在、「ドル覇権」によって恐怖に満ちた平衡状態に置かれている。いかなる実質的な改革も、世界の金融と経済のシステムの完全な崩壊を導きかねない。このような崩壊を恐れるからこそ、世界金融システムの上層にいる国家(欧州や日本)は、世界経済のバランスの取れた持続的発展に対する「ドル覇権」の危害を感じているにもかかわらず、実質的な改革内容を伴った代替案を提出できずにいる。
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